ブームの背景には“現代女性の性への不満”が…

性には無数のバリエーションがあっていいし、必ずしも「挿入=セックス」ではない。しかし多くの女性たちにとって、これまで挿入ありきのセックスしか経験がないので、セックスは苦痛の代名詞のイメージがある。そんな性の固定観念から解き放ち、全く別の世界へと誘うのが、タカシさんの得意とするところである。

タカシさんの話を聞いていると、多くの女性たちがリアルの異性関係に不満や不全感を抱えているが、いざ体の関係を持つことになると、口を閉ざさざるを得ないという歪な構造が浮かび上がってくる。

そしてそんな女性たちの置かれた現状にタカシさん自身、危機感を感じていることがひしひしと伝わってくる。しかしこれは、何もタカシさんから聞く話だけではない。これまで取材してきた多くのセラピストたちが、この危機感を口にするのだ。

しかし私自身振り返ってみても、いざ性的なことになると相手に対して口をつぐんだり、我慢してやり過ごした経験が幾多もあったことに気づかされる。

菅野久美子『ルポ 女性用風俗』(ちくま新書)

女風がブームとなっている背景の一因には、そんな現代社会を生きる女性たちの心と性のあり様が反映されていると感じずにはいられない。私はいつだって、「性」とはその社会を映す鏡だと考えている。そういった意味で、セラピストたちは女性たちの心と体を正面から受け止め向き合っている稀有な存在だともいえる。

昨今の流れとして、女風は低価格化の波や、SNSの台頭などにより、「売る側」も「買う側」もより一般に向けて門戸が開かれつつある。ユーザー側も大学生や主婦、会社員など、ありとあらゆる客層へと広がり、かつてのように限られた女性たちのものではなくなってきている。令和は、もはや現実の世界では手に入らないであろう女性たちの見果てぬ夢が、さまざまな偶然と欲望とテクノロジーによって具現化しつつある新時代なのかもしれない。

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