1.5倍速、スキップ…操作できるほうが内容を理解しやすい
そのコツとは、
「基本は1.5倍速で観て、詳しく知りたいところは通常速度で観る」
「すでに観たことある、知っているものはスキップする」
このような声がけをし、子どものコントロールできる部分をさらに増やしてあげるのです。これは、米国のメリーランド大学の大学生を対象にした動画教材の活用に関する研究で、視聴者がコントロールできる状態で動画を視聴させたほうが、コントロールできない動画の視聴よりも、内容を理解しやすく成績が上がりやすいという結果が出ています(Zhang, D., Zhou, L., Briggs, R. O. & Nunamaker, J. F., 2006)。
また、子ども自身でコントロールできるというのは、子どもの「自己決定感」が高まり、やる気が出やすいという研究結果もあります(Deci & Ryan, 2000)。自己決定感とは、「自分のことは自分で決めている」という気持ちや感情のことです。
私自身、小学生の子ども2人を持つ母親にヒヤリングを行いました。その結果、2人ともテレビはあまり観たがらず、観るとしても録画されたものだけ。観る動画はもっぱら、YouTubeだそう。その理由を母親に尋ねたところ、「子どもが、(録画でない)テレビは観たいものがやっていないし、スキップや早送りができないから、かったるくてイヤって言うんですよ」と話してくれました。
心配だからと制限をかけすぎるのはよくない
動画視聴において、「自分で決めて、自分のコントロール下に置く」ことが、子どもの自発的な行動につながるのだと、改めて実感しました。なお、子どもにコントロールを与えることは、動画を観るためのやる気を高める効果がある一方で、親の側から子どもの動画視聴をコントロールしすぎてしまうと、子ども自身にとって最適な学習ペースが崩され、認知的な負荷がかかりやすくなる可能性があることも指摘されています(Paas & Sweller, 2014)。
そのため、子どものコントロールと親側からの指示出しのバランスをとることが重要でしょう。生徒と教師間でのコントロールのバランスに関する研究でも同様のことが指摘されています(Hill, Wiley, Miller Nelson, & Han, 2003)。
このStep1~2を経ることで、最終的に「子どもがオンライン動画教材で自発的に学ぶ」習慣を身につけさせます。つまり、「自立」した状態です。
もちろん、安全性やセキュリティ、道徳的な側面からも、視聴の制限などの配慮が必要となるのは言うまでもありませんが、子どもに指針を与え、自らコントロールできるようにすることが重要なのです。
最後に、一例として、私が知っている成績優秀な生徒の1日のルーティンを聞いてみました。そこでの学習用動画の視聴の仕方を紹介します。