中国でのアニメ配信が「ビジネス」になった瞬間

ボランティアでアニメの字幕を作っていた字幕組の動画を勝手にDVDやBDにプレスして販売するDVD業者や、コンテンツを増やすために勝手にアップロードしていたWebサイト、或いは字幕組によるBitTorrent上での配布により、日本コンテンツの存在は一部の若者にひそかに広まり、日本文化にリテラシーのある層を育んだが、2007年頃には、日本に著作権侵害国家として中国は認知されるようになった。

しかし2012年、中国のNetflixと呼ばれる「愛奇芸」とアニメ専門動画チャンネル「bilibili」による日中同時間でアニメ配信が始まると状況は一転。記念すべき1作目に配信されたのが『Fate/Zero』で、数千万近い再生数を記録した。これにより中国で「アニメオタクが正式に消費者として認知される」こととなった。これまで海賊版を消費していたため、なかなか数字として表れず、あくまでも大衆ではなく「小衆文化」として見られていたのだ。

これを機にITプラットフォームはどこも「二次元」を標榜とする新しい消費者層開拓をはじめる。代表的な例としては中国ゲーム会社「盛趣」が2012年に、2013年に「ネット―ス」が中国での運営権を取得したアプリゲーム「拡散性ミリオンアーサー」(2012年/スクウェア・エニックス)と「乖離性ミリオンアーサー」(2014年/スクウェア・エニックス)である。

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以前の中国ゲーム業界は、中国時代劇ジャンル「武侠」に加え、古典である三国志、西遊記をベースにしたゲームが大半を占めていたが、日系アニメ風ゲームが増え始めたのもこの頃だ。

ゲーム会社「暢游」が台湾X-Legend社から中国運営権を取得したオンラインゲーム「幻想神域-innocent world-」(2013年/X-Legend)は、中国で初めて日本人声優、作曲家、歌手を起用し、大きな成功を収めた。幻想神域の当時の紹介文には日系アニメ風ゲームとあった。

日系コンテンツを普及させるために著作権を守るように

これら一連の流れは、中国で日本系アニメ・ゲームコンテンツがビジネスになることが認識されたこと、そして日本コンテンツに触れてきた人々が、会社裁決できる立場になったこと、という2つのタイミングがうまく重なったのが要因として挙げられる。

そして制作物により日本風コンテンツとしての色合いを持たせるため、日本のアーティストを起用し始めたことから、日本が重視する著作権を守ろう、という考え方が定着、ひいては著作権に対する考えが深まっていった。

現在中国の会社は日本の小説や漫画のドラマ化、コラボ実施に関して日本の版元に伺いを立てるのが比較的常識になり、消費者も特定の商品、例えばフィギュアは「この会社が取り扱っている商品が本物」といった感じで10年前に比べ環境は大きく変わった。