日本のアニメや漫画のキャラクターが続々と中国に進出している。中国でのコンテンツビジネスに詳しい峰岸宏行さんは「中国には日本文化をスピーディーに受け入れる土壌がある。表現規制や知名度の問題を解決できれば、巨大ビジネスに成長する可能性がある」という――。
フィンランドのムーミンワールドの看板
写真=iStock.com/LordRunar
※写真はイメージです

伊藤忠が手掛ける「ムーミン」の中国進出

2021年9月、伊藤忠商事がアジアでアニメやキャラクターのライセンス事業に参入する、というニュースがあった。香港にライセンス大手などと合弁会社を設立し、まずはフィンランド生まれのキャラクター「ムーミン」を中国で独占展開する。この新会社では今後5年で100億円の売上を目指すという。

中国では「ムーミン」はあまり知られていない。一方、日本での人気は圧倒的で、発祥地である欧州よりも日本での人気のほうが高い。その人気は日本で制作されたアニメが発端だったことを考えると、事実上、「ムーミンは日本コンテンツ」と括ることができる。

中国は日本コンテンツに対する理解、認知が非常に高い地域である。1976年まで約10年間続いた文化大革命が終わったとき、中国で一番最初に上映された海外映画は高倉健主演の日本映画『君よ憤怒の河を渉れ』(中題:追補)だった。また近年では新作アニメの日中同時配信が行われたり、ゲームコラボが非常にさかんであったりと、若い世代も日本コンテンツに親しみを持っている。

とりわけ、この10年で状況はかなり変わった。「ワンピース」「ナルト」「ドラえもん」「夏目友人帳」といった日本生まれのコンテンツは、いまや中国でも国民的キャラクターになっている。

たとえば直近のアニメ映画の興行収入は、『君の名は。』(2016年)は5.75億元(約86億円)、『STAND BY ME ドラえもん』(2014年)は5.3億元(約79億円)、『ONE PIECE FILM GOLD』(2016年)は1.03億元(15億円)、『名探偵コナン ゼロの執行人』(2018年)は1.27億元(約19億円)――と非常に高い数字を叩き出している。