不自然な常識を押し付けられる子どもたち

人間はおおよそ4歳から記憶があるとされているが、現在の6歳児はその記憶のほぼすべてにおいて、他人の相貌が顔の下半分を隠した不自然な姿で残っていることだろう。身内以外の人間については、マスクを着けた姿しか見ていないのだから。子ども向け番組を見ても、芸能人の出演者は素顔ながら、一般人の出演者はマスクをしている。食レポを見ても、食べ物をクチに運ぶときだけマスクを外し、入れた途端にマスクを再び着用している。そんな映像を子どもたちは見続けているのだ。

日本医科大学特任教授の北村義浩氏は「マスクはパンツ」とテレビ番組で言い放った。正直、噴飯モノの表現だが、6歳~8歳の子どもたちにとっては記憶している期間の大半がマスクを着けた人々に囲まれる生活だったため、北村氏のこの指摘は、彼らにとっては常識になっているかもしれない。大人が「マスクを取っても構わない」と言っても、「外では恥ずかしいよ~」などと返す子どももいる、との報告もある。

現在の大人が子どもの頃に培った「常識」はもはや、感染症対策とやらが記憶のなかで当たり前となった小さな子どもたちにとっては「非常識」となっているのかもしれない。専門家、政治家、メディア、そしてそれらを盲信するor他人の目が気になる親と教師が「いまは我慢」「コロナが明けてから」「他の人にうつしたら大変なことになるからね」などと教育しまくった結果、子どもが享受できる当たり前の経験すら阻害されてしまっている。

写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
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「コロナが終わったら何がしたい?」に対する小学生の回答

神戸市議の上畠寛弘氏は2022年3月8日のツイートで、小学校1年生~6年生に「コロナが終わったら何がしたい」と尋ねたアンケート結果を公表した。1位は全学年が「旅行」。2位は1・2・4年生が「マスクを外す」、3年生が「祖父母の家に行く」、5・6年が「友達と遊ぶ」。3位は1・2年生が「祖父母の家に行く」で、3・6年生が「マスクを外す」。4年生が「友達と遊ぶ」、5年生が「運動会」だった。

この結果を見て、私はいまの小学生たちが不憫でたまらなくなった。これらの行為は大人たちが小学生の時分、普通の行為としてやっていたことばかりである。「高齢者を守る」という大義名分のため、新型コロナに罹患してもほぼ重症化せず、死者はこれまで2人(うち1人は基礎疾患あり)しかいない10歳以下の子どもから「当たり前」や「普通」を奪ったのだ。

学校での感染対策も、並べてみるとバカみたいなものばかりである。「組まない組体操」「運動会のリレーは2メートルのバトン使用」「運動会はマスク着用」「学校の各テーブルには覆いをつける」「吹かないで音符どおりに指だけを動かす縦笛」「ビニールカーテンのなかに入って合唱」「プールでもマスク着用」「皆で映像を見るだけの『リモート修学旅行』」「入学式・卒業式は中止」「卒業式の参列は生徒1名につき保護者1名まで、在校生の参加は不可」「授業参観は廊下に台を置き、保護者はそれに乗って天井近くの窓から教室のなかを見る」「卒業式参加の条件はPCR検査陰性」「給食は『黙食』」「マスクを外している時間が15分以上になると濃厚接触者認定をされるので、給食の時間は14分」……。もはや、どこからツッコめばいいのかわからない。