里帰り出産、帰省すらもはばかられる社会

「子どもや若者が高齢者にうつす」という設定が政治家や専門家から繰り返し語られたことにより、「帰省禁止」「高齢者施設での面会禁止」「死亡直前の看取り禁止」といった方針が常識のように扱われることになってしまった。彼らが設定したこれらの方針は、2年経ってもおおむね変わらないまま用いられ続けている。

同様に「マスクは感染防止に効果がある」という設定も変わることなく存続中だ。おかげで、マスク生活が延々と続いている。「99%超がマスクを着けていても、陽性者は爆増しました。この事実について、合理的な説明をお願いします」とマスクの有効性について尋ねても、マスク真理教の信者からは「皆がマスクを着けていなければ、もっと被害はひどかった!」とか、「マスクを外したときに感染してしまったのだ!」など、論拠不明、検証不能の反応が返ってくるばかり。「高齢者施設でもクラスターが発生しました。面会者はいないはずですよね?」と問うても「若い看護師が施設内に持ち込んだ!」と、これまた検証不能な反論が返ってくる。

地方で暮らす人々が、都会に住む家族に対して「お前は葬式に来るな」「法事には出なくていい」などと忌避する事態も頻発した。また、コロナ騒動の初期にあたる2020年4月の出来事ではあるが、首都圏から岩手県へ出産のため里帰りしていた妊婦がコロナ陽性を恐れられ、産婦人科をたらいまわしにされる事案も発生。受診を断った2つの病院の方針は「2週間県内に過ごしたうえで、発熱などの症状がないこと」が受け入れ条件だったという。件の妊婦は里帰りしてから4日目だったため、病院は断ったそうだ。

現在では多少意識が変わってきたかもしれないが、いまだ高齢者を中心にして、大都市圏から地方にやってくる人を好ましく思わない向きはあると聞く。先の妊婦の一件にしても、いくら2年前の出来事とはいえ、里帰り出産を躊躇するには十分すぎる理由となるだろう。それどころか、帰省という習慣すらはばかられるようになってしまうかもしれない。

巨大な票田である高齢者を優遇し続ける政治家

さらにいうと、他人を感染源扱いして恐怖し、接触を極力回避する人も以前より増えたに違いない。男女が出会う機会も減ったことだろう。

また、性行為を通じてコロナ感染することへの恐怖であるとか、コロナ対応で不自由が付きまとう出産の煩わしさなどから、性行為の機会が減少したり、「子どもをつくろう」と考えるカップルが少なくなったりする可能性も否定できない。これでは、日本の人口減少も加速するばかりだ。まさに国家衰退への道を着々と進んでいるのである。なんというアホ政治であろうか(皮肉やホメ殺しでも述べようと思ったが、もはやそのレベルではないので「アホ」とストレートに書いた)。

基本的に、政治家は巨大な票田である高齢者を優遇する政策を掲げる。コロナ対応も同様で、「人命優先」「高齢者を守れ」を錦の御旗に政策を推し進めてきた。そこで割を食ったのが子どもや若者である。

マスクをして窓の外を見ている女の子
写真=iStock.com/Hakase_
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老い先短い高齢者と比べて、子どもや若者は時間あたりの価値が高い存在だ。同じ1年間でも、高齢者と若者では、そこで得られる経験や学びに大きな差がある。考えてみてほしい。小学4年の子どもや高校3年の若者がまともに学校にも通えず、行動を制限され、友人とロクに触れあうこともできない状況を。

その一方、すでに青春を謳歌して社会人としての務めも終えた老人たちは、日がな一日テレビを見たり、店でカラオケに興じたりしている。コロナ騒動の期間、高齢者を優遇したばかりに子どもや若者が被った不利益は計り知れない。私はたとえ「差別主義者!」と罵られようと、老人より優先されるべきは子どもや若者だと主張し続ける。なお「リモート授業(リモートワーク)、ぜんぜんラクだったっすよ。オレはずっとこの生活が続いてほしいっす」なんていう若い連中のことは、ここでは無視する。貴殿らは社会が元に戻っても、その勉強のやり方/働き方が続けられるよう教師や上司に要求すればいい。