アベノミクスで日本は急激に貧しくなった

アベノミクス直前の2012年との比較でもそうだ。

2012年6月に、日本のビッグマック価格は320円であった。このときの為替レートは1ドル=78.22円であった。これで換算すると4.09ドルとなり、アメリカの4.33ドルとあまり変わらなかった。

つまり、日本は、国際的に見て、アベノミクスの期間に急速に貧しくなってしまったことになる。アベノミクスの期間に生じた最も大きな経済的事件がこれだ。

もっとも、それ以前を見ると日本の値はさらに高かった。2000年では、日本のビッグマック指数は10.5で、世界第5位だった。指数がプラスだったので、アメリカより高かったことになる。日本より高い国は、イスラエル、スイス、デンマーク、イギリスしかなかった。この10年、20年の間に、日本の国際的地位が大きく下がったのだ。

異常な円安に導く経済政策がすべての元凶

賃金やGDPの日本の立ちおくれについてよく言われるのは、過去20年以上にわたって、日本経済がほとんど成長しなかったことだ。それに対して、世界の多くの国では経済が成長した。「このため、日本が取り残された」と言われる。

この考えによれば、日本が貧しくなった原因は、日本の成長率の低さだということになる。確かにそうだ。しかし、ここでとどまらずに、さらに検討を続ける必要がある。

なぜなら、アメリカで物価が上がり日本で上がらなければ、あるいはアメリカで名目賃金が上がり日本で上がらなければ、為替レートが円高になって調整されるはずだからである。

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ところが、日本は金融政策によって為替レートを円安に導いた。このため、国際的に見て日本の物価や賃金が安くなったのだ。

したがって、現在の日本の低い賃金や「安い日本」を問題とするのであれば、その責任はアベノミクスにあるということになる。

シャーロック・ホームズ・シリーズの『銀星号事件』で、ホームズは、犯人が侵入した時間に「犬が吠えなかった」ことが不思議だと言う。あって当然のものがなければ、それが問題を解くカギだ。異常な円安に対して、番犬が吠えなかったのが、日本の問題なのだ。

「亡国の円安」としか言いようがない

円安になれば簡単に利益が増えるので、技術開発や新しいビジネスモデルへの転換が行われず、その結果、賃金が上昇しなかった。

円安は次の二重の意味において、日本を貧しくしたことになる。

為替レートが円安になったため、日本円の購買力が低下した。これは、「円安の直接効果」だ。

円安の麻薬効果によって、日本企業が技術開発やビジネスモデルの転換を怠った。これは、「円安の間接効果」だ。「亡国の円安」としか言いようがない。