日本の物価が安すぎることを示すデータ
2021年6月におけるいくつかの国・地域のビッグマック指数を見ると、つぎのとおりだ(カッコ内がその国の指数)。
指数がプラスの国として、スイス(24.7)、ノルウェー(11.5)、スウェーデン(9.6)などがある。これらは、アメリカ人から見ても、物価が高いと感じる国だ。
マイナスでも日本より指数が大きい国・地域として、韓国(△29.2)、アルゼンチン(△30.2)、タイ(△31.0)、パキスタン(△36.3)などがある。
これらの国では、アメリカ人は物価が安いと感じるが、日本人は高いと感じる。
ビッグマック指数の順に世界各国を並べてみると、調査対象57カ国・地域中で日本は31位だ。
ヨーロッパ諸国をはじめとして、30の国が日本より上位にくる。サウジアラビア(26位)も日本より上位。いまや日本人は、世界の多くの国に行ったときに、物価が高いと感じる。
物価の高低感覚は、各国の物価と為替レートが影響する
ビッグマック指数は、つぎの値によって決まる。
第1は、日米のビッグマック価格だ。アメリカのビッグマック価格が変わらないとき、日本のビッグマック価格が上がれば、日本のビッグマック指数の値は大きくなる。マイナスであれば、指数の絶対値が小さくなる。つまりアメリカに近づく。
第2は為替レートだ。円高になれば、日本のビッグマック指数の値は大きくなる。指数がマイナスであれば、絶対値が小さくなる。そして、アメリカに近づく。
「円安になったために、日本人が外国に行くと物価が高いと感じるようになった」と言われる。しかし、これは正確ではない。
円安になったからといって、直ちに円の購買力が低下するわけではない。もし日本の物価が上昇したとすると、日本人が外国に行っても、物価が高いとは感じないだろう。
逆に為替レートが変わらなくても、日本の物価が安くなったとすると、日本人は外国に行って物価が高いと感じるだろう。
日本人が外国に行って物価が高いと感じるかどうかは、ビッグマック指数のようなもの、つまり、為替レートと国内外物価を考慮した指数によって決まるのだ。
10年前の日本のビックマック指数
日本のビッグマック指数がこのように低い位置になったのは、比較的最近のことである。昔はこうではなかった。
ビッグマックの2010年の価格(ドル換算値)で見ると、次のとおりだ。
日本は3.91ドルで、アメリカの3.71ドルやイギリスの3.63ドルより高かった。日本より高かったのは、スイス、ブラジル、ユーロ圏、カナダぐらいだった。韓国は3.03ドルで、日本より低かった。この頃には、日本人が海外に行った時に、多くの国で物価が安いと感じたはずである。