「広島、長崎に続く被爆地を生むことは絶対にあってはなりません」

仏教界では連合組織である公益財団法人全日本仏教会(声明を2月28日に発表)をはじめ、曹洞宗(同3月1日)、臨済宗妙心寺派(同3月1日)、浄土宗(同3月2日)、天台宗(同3月3日)、浄土真宗本願寺派(3月4日)、真言宗智山派(3月5日)などが続々、声明を発表している。

ただ、いずれも「あらゆる暴力は容認できない」「非戦の立場を堅持する」「暴力の連鎖を食い止めよ」「武器を置いた対話による解決を強く望む」といった、一般的な抗議声明の範疇にとどまる。インパクトがあればよいというものではないが、形式的な声明では人々の心には響かない。

そうした中で、プーチン大統領直々に抗議文を送りつけた宗派が現れた。被爆地広島に大本山を置く臨済宗佛通寺派である。5日、ロシア大使館宛に抗議文を送付した。

臨済宗佛通寺派によるプーチン大統領宛の抗議文

宛先は「ロシア連邦大統領 ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン閣下」。広島の仏教教団らしく、強い言葉で断罪している。

「被爆者が懸命に訴えてきた『世界中の誰にも二度と同じ体験をさせてはならない』との切なる思いを踏みにじるもの」
「地球上に、広島、長崎に続く第三の戦争被爆地を生むことは絶対にあってはなりません」

一方、各地の仏教寺院には、不安に駆られて人々が寺に集い始めている。

愛知県愛西市の浄土宗寺院大法寺は「縁切寺」で知られ、縁切りの絵馬で有名だ。ウクライナ侵攻後、「早く戦争が終わってほしい」などの内容の絵馬が複数、奉納されているという。

住職の長谷雄蓮華さんは「ウクライナでの戦争のニュースやSNSに日々接し、中には“不安のトリガー”が引かれてしまった方もいらっしゃるように思います。コロナ禍もそうですが、『どうしていいかわからない不安』が押し寄せ、お寺に救いを求める人が増えてきていると感じます」と話す。

長谷雄さんは、だからこそ、お寺を地域に広く解放し、僧侶は人々の悩みに耳を傾けるべき、と強調する。