欧米の下請けと元請けの間には封建的な上下関係はない

日本では、大手企業が中堅の下請け企業に仕事を発注し、下請け企業は、中小の孫請け企業に仕事を発注するというのはごく当たり前の感覚です。海外でもメーカーが部品の製造を別の企業に依頼するのはよく見られる光景ですが、封建的な上下関係が成立しているケースはほとんど見当たりません。

欧米では付加価値の低い製品の製造を請け負った下請け企業は、合併などによって市場シェアを高め、元請け企業との交渉力を高めようとします。あるいは一定価格以下の仕事は利益が出ないので断ってしまい、製品を供給する企業数が最適化されることで価格は下がらないことがほとんどです。

ところが日本の場合、互いに知った企業としか取引しないため、こうした市場メカニズムが働かず、下請け企業はいつまでも価格競争力を発揮することができません。その結果、元請け企業は際限のない値引き要求を続けるという悪循環に陥ってしまいます。

流通も同じです。商品をすみずみまで展開させるには、1次卸、2次卸など、ある程度の階層構造になるのはやむを得ませんし、海外でも日本の卸に相当する企業はたくさんあります。

ところが日本の場合、系列の縛りが厳しく、メーカーに直接掛け合っても「業界の和を乱す」といった理由で、取引がない販売店には製品を出荷してくれないケースがたくさんあります。

日本に「中間マージンだけを取る」企業が存在するワケ

日本には人口1000万人あたり約28万の事業所が存在していますが、米国では24万しかありません(中小企業庁および米国勢調査局)。日本は人口に比して会社数が多い状況ですが、その理由のひとつとして考えられるのが、硬直化した取引系列の存在です。

硬直化した系列取引が長く続くと、次第に中間マージンを取るだけの企業も現れてきます。本来であれば、この業務に従事する人は不要であり、その分、収益を上げる別の業務に従事することで、経済圏全体での付加価値を増やせますから、生産性も向上するはずです。

加谷珪一『国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶』(幻冬舎新書)

中間マージンを取るだけの企業が生み出す付加価値は低く、薄利多売にならざるを得ません。当然のことながらその企業で働く従業員の賃金は安くなってしまい、労働者全体の平均賃金を引き下げてしまいます。

他人を信用できないという社会風潮は、実はGDP全体にも極めて大きな影響を与えていることがお分かりいただけると思います。

しかもこうした企業は中間生産物しか生産しませんから、本質的な意味でGDPには寄与しません。こうした企業が別の製品やサービスの提供にシフトすれば、あっという間に日本のGDPは増え、付加価値が上昇する分、賃金も上がるはずですが、それが実現できていないというのが現実です。

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