未婚男性の半分は年金も満足に受け取れない

多少の違いはあっても、50歳以上でさえ未婚男性がもっとも短命です。半数が68歳くらいで死亡しています。ということは、未婚男性の半分は65歳から年金を受け取ったとしても、ほぼ3年程度しか受け取れない計算です。

未婚のまま生涯を終える男性に対して、時に既婚者たちから「結婚して子どもを産み育てることもしないフリーライダー」呼ばわりされることがありますが、自分の働いた金で積み立てた年金すらほとんど受け取らずに天に召されるのだとしたら、フリーライダーどころか社会のために身を犠牲にして尽力しているとも言えないでしょうか。

独身が短命であるという理由は、生活習慣によるところが大きいと思われます。

2020年における死因を配偶関係別に比較してみましょう。データは45~64歳までのいわゆる現役世代の働き盛りの男性の死因を、配偶関係別の構成比と当該年齢全体の構成比と比べたものです。プラス表示になっているものは、全体の構成比より高いもの、すなわちその死因が多いことを意味します。

未婚は腎不全、離別は肝疾患が飛びぬけている

一目瞭然で、有配偶男性が上回るのは悪性新生物(癌)のみで、他はほとんど未婚と離別の独身者が上回ります。未婚の死因では、腎不全比率がもっとも高く、続いて高血圧性疾患、糖尿病と続きます。一方、離別男性は肝疾患が飛びぬけています。いずれにしても、明らかに未婚・離別の独身男性と有配偶男性とでは死因も異なることが分かります。独身者に癌が少ないのは、決して癌に対する耐性があるわけではなく、癌が発症する以前の年齢で、上記生活習慣病によって死亡しているものと推測します。

未婚中年男性がこうした生活習慣病に罹患しやすいのは、ほぼ食生活です。家計調査によれば、単身男性(勤労者)のエンゲル係数は高く、特に外食費は、コロナ前の2019年まででいえば、1家族の外食費の2倍近い出費を一人でしています。日本の外食産業は独身男性が支えていたといっても過言ではありません(「ノーリスクで高単価」ソロ外食を締め出す“時短罰則”が日本を滅ぼす参照)。ただし、そうなると当然、栄養の偏りが起きます。何十年に及ぶそうした偏食生活のツケが生活習慣病という形で返ってきます。

コロナ禍以降は、運動不足気味の独身者も多いのではないでしょうか。また、離別男性が、圧倒的に肝臓を患ってしまうのは、離婚によって生じたストレスや寂しさなどによる酒量の増加などが関係するでしょうか。