女性は結婚すると寿命が縮んでしまう?

その点、有配偶男性は、日々の食事を管理してくれる妻がいる家庭ならそのリスクは軽減されます。いかに日々の食事が健康に重要な役割を果たしているかが分かります。

もちろん、未婚や離別男性であっても、食生活に気を付けて、健康的な人もいると思いますが、これだけ死亡中央値が異なるとすると、配偶関係の違いは大きな影響があると考えられます。性別だけではない寿命ファクターとしての配偶関係による違いについてはもっと注目されてよいと思います。

キッチンで調理中の女性の手元
写真=iStock.com/PeopleImages
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一方、女性は男性と真逆の傾向です。有配偶女性がもっとも短命で、未婚や離別女性のほうの死亡中央値が上回ります。結婚生活中の女性は寿命が縮むのでしょうか? 長生きのためには、有配偶女性は離婚したほうがよいのでしょうか?

いいえ、そうではありません。

有配偶女性の死亡中央値が低くなるのは、有配偶である期間が男性より短いため、総数の母数が小さくなるために起きた計算上の問題です。大抵の妻は夫より長生きです。つまり、多くの有配偶女性はそのまま死別女性へと移行します。実際、実数では有配偶のまま死亡する女性の数は少ない。50~64歳での人口千対死亡率で見れば、有配偶の男性は3.1人、女性は1.9人です。つまり、結婚しているから女性が短命になるというわけではありません。

実際、有配偶と死別あわせた既婚者群で見ると、既婚女性の死亡中央値は男性を上回ります。

50歳以上配偶関係別死亡年齢分布

女性の「孤独耐性」は男性の1.3倍

注目すべきは、条件が一緒であるはずの未婚男女の死亡中央値の圧倒的格差です。未婚女性のほうが未婚男性より15年以上も長生きします。これは食生活だけの問題だけではないような気もします。

「孤独に強い」のは男性というイメージがあるかもしれませんが、逆です。実際、一人や孤独を快適だと感じる割合は圧倒的に女性のほうが多いことが分かっています。私のラボで2020年に調査した結果によれば、「孤独を楽しめる」と回答した割合は、未既婚ともに女性のほうが男性より1.3倍も「孤独耐性」が高いのです(1都3県20~50代未既婚男女約1万5000人を対象)。1.3倍とは未婚男女の死亡中央値年齢の差とも一致します。

「孤独耐性」が高いというのは「いつも一人でいようとする」指向ではなく、ましてや「一人でいる状態を耐えしのぶ」力でもありません。むしろ、社会生活として必要な人とのつながりを保ちながら、「一人の時間も楽しめる」力です。多かれ少なかれ、仕事を辞めれば人は、物理的に一人になることが多くなるし、この一人の時間をどう生きるかが試されてくるのです(「誰も話せる相手がいない」日本の既婚男性が次々と発症する“見えない病”の正体参照)。