「私の稼ぎで生活しているのに…」
「マンションのローンが残っていたこともあり、私の本音はこれまでと同じように夫には普通に働いてほしかった。ただ、夫の荒んだ姿を見ていると反対もできなかった」とN緒さん。結局、会社を辞めた夫は、「昔から興味があった」という廃材を使ったアート作品を制作し、ネットで販売する道を選んだという。一方で、「夫の収入は当てにできない」とN緒さんは、社内で管理職の資格を得るための試験を受け、無事に合格し昇進を果たした。
こうして一見、なんとなくソフトランディングしたかのように見えた、ウィズコロナ時代の夫婦の新しい生活スタイルだったが、N緒さんが抱える夫への不満は日ごとに増すばかりだった。「私の稼ぎで生活しているにもかかわらず、『どうしてそんなにあくせく働くの?』『一度きりの人生、自分らしく生きなきゃ損だよ』などと言ってくる夫に腹が立つ。私だって、好きで働いているわけじゃない」。
N緒さんの不満はもうひとつあった。それは、作品の材料として夫が集めてくる廃材で、自宅が“ゴミ屋敷化”してしまったことだった。「汚れた車のバンパーやところどころ腐っている流木も、夫に言わせれば“お宝”。仕事から疲れて帰ってきて玄関を開けた途端、廃材の山に視界をふさがれると毎日本当にうんざりする」。現在N緒さんと夫は別居婚に向けて物件を探しているという。
「ご飯は残さずに」と子供に教えたいのに…
【CASE3】「エコ妻」を理解できないSDGsに無関心な夫
「夫のすべてが受け入れられなくなった」と離婚の相談に訪れたY子さん(40歳)は、11歳年上の夫と2人の子供と暮らす4人家族。夫とのトラブルの理由は「価値観が違いすぎる」。地球環境に配慮して暮らす“エコ派”のY子さんに対し、妻のエコ活動をはじめとするSDGsには無関心の夫。朝起きてから夜寝るまで、Y子さんは夫の言動が全部気に入らず、まだ幼い2人の子供を引き取って離婚したいと考えている。
例えば家族で食事に出掛けても、フードロスを考えるY子さんは「出された料理はご飯粒ひとつも絶対に残さない」と決めている。ところが夫は「残してもいいから、食べたいものはどんどん注文しなさい」と子供たちにもすすめる。食べ切れないほどの料理がテーブルに並んだのを見て、「ケチケチしない大きな人間に成長してほしい」と満足そうにうなずく夫の横で、Y子さんはため息をつくのだという。