売却時に利益があがらない場合は
プレパッケージでは、既存の株主の利益は再建計画で100%減資され、その後にスポンサーが増資を引き受けることとなる場合が多い。もっとも上場維持の観点から減資が一部に過ぎない場合もある。JALの場合も、仮に再建計画で100%減資が認められ、スポンサーである支援機構が新たに出資(増資)するのであれば、再建途上における将来の果実(利益)はまず支援機構に落ちるようにみえる。ただし支援機構は、設立後5年で解散が予定されており、それまでにJAL株式は、別の企業に売却されることになる。売却時点において、JAL株式の時価が、株式取得価格より高いのであれば、それが支援機構の儲け(果実・利益)となる。逆に言うとJALが再浮上して利益を生む会社とならないと、株式を売却しても利益は生まれず果実もないことになる。
支援機構がJALの株式売却で利益を取得できれば、この利益は最終的には支援機構の行ったJAL以外の案件の損益と合わせられ、最終的に支援機構に利益が発生すれば、株主に配当される。これは、産業再生機構と同様の構造である。ただし支援機構の株式は、国(正確には預金保険機構)と金融機関で、それぞれ50%ずつ保有されており、結局、JAL株式を売却した利益は、他の案件の損益と通算された後、株主である国(国庫)と金融機関に還流するわけである。配分の割合は、支援機構の公共性を勘案して解散時に決定されるとのことである。
このような、いわば「国営ファンド」の介入により、倒産したJALそのものが大幅な事業の毀損を避けられたという側面は大きい。
JALのような超大型企業のスポンサーになるのであれば、かなりの資本力を持った巨大ファンドや企業でなければ不可能だ。他業種であれば、外資の同業他社が参入することもありうるだろうが、航空会社には外資規制があるため、参入しにくい。緊急避難的な処置である。
他方で、競争原理が働かないまま、再生機構がスポンサーの役目を果たすことに反対論もあるようである。つまり、支援機構が将来、既存の株式をすべて消滅させて、約3000億円を出資する予定であるということは、いわば国営ファンドによる出資となる。このようなファンドの存在によって民間の事業再生ファンドが介入する余地が狭まる恐れがあるのだ。望ましいのは、支援機構のような国家に支えられたファンドが活躍する場面と、民間ファンドが活躍すべき場面とをきちんと切り分けて、それぞれが100%の能力を発揮できるような環境を整備していくことであろう。可能であれば両者が協調することもあってよいであろう。そうでないと、民間ファンドでは、再生ノウハウの集積が遅れ、日本の経済や金融の一翼を担うことができなくなる。