「私より彼氏をとるんだな? お前とは絶縁だ、顔も見たくない!」

夫と出会ってしばらくしてから、母親とは絶縁。いつも母親の連絡に怯え、何より母親の希望を優先している緑川さんを見ていた夫はこう言ってくれた。

「お母さんと仲良くしてるって言ってたけど、“仲良し”じゃなくて“言いなり”だよ。気付いてないかもしれないけど、お母さんと会った後はよく過呼吸を起こしてるし、精神的に良くないから距離を置いたほうが良いよ」

そのため緑川さんは、母親から誘いの電話が来たときに、「その日は難しい。あとしばらく距離を置きたいな。少し疲れてて」と意を決して伝えた。すると母親はこうまくし立てた。

「何よ、誘ってやってるのに。私といるのが疲れるっていうの? 生意気な! どうせ彼氏の入れ知恵だろ? お前は私より彼氏をとるんだな? お前とは絶縁だ、顔も見たくない!」

一方的に電話を切られて以降、一切連絡はない。

「虐待とは無縁な息子に嫉妬してしまっている自分がいます」

現在、息子は2歳。20代後半の緑川さんは初めての育児に奮闘中だ。

「息子の泣き声は特に苦手です。妹(母と継父との子)を泣かせたらいけないという刷り込みが強くて、息子が泣くととても強い罪悪感に襲われます。また、私が子どもの頃は、母や継父の機嫌を損ねると暴力を受けるのが当たり前だったので、息子がいけないことをするとイライラしてしまい、脳内で息子を殴る映像が流れます。もちろん、手を上げたことは一度もありませんし、これからもしません。母親である私が虐待しないように育てているので当たり前なんですが、虐待とは無縁な息子に嫉妬してしまっている自分がいます」

8歳から14歳までの7年間、母親と継父からの虐待に苦しんできた緑川さんだが。現在の母親に対する気持ちをたずねると、「恨みしかない」と吐き捨てるように言う。

写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです

「母のことは本当に、心底嫌いです。なぜなら、幼い頃は大好きだったからです。好きだったからこそ、私に憎しみを向けて、あらゆる手段で虐げてきたことが許せません」