タツはいつも親切でジェントルマンだった

それで日本に行ったら、大量の警察官に囲まれてまた慣れなきゃいけない新しい出来事が起こった。マニラに行ったときは、ふーっ(汗をふくジェスチャー)……。あの時はマルコス大統領の汚職があったんだ。マニラを気に入らなくてある意味よかったと思う。よくない政権だったからね。まちがった政権だし、国民のための政権ではなかった。

——最初のコンサートの後、タツとの関係はどうなりましたか?

【ポール】年を重ねるごとに親しくなっていったと思うね。初対面から彼を気に入った。でもきみも言うように、最初は友達になれるような時間が多くはなかった。

彼はぼくたちより年上だった。でも時が過ぎて、だんだん彼のことを知るようになった。彼はいつも親切だった。きみの言うようにジェントルマンだ。それが重要だった。彼はいい男だ、落ち着いているし、穏やかな性格だ。ワーワーキャーキャー騒がない! 騒いだ彼を見たことがない。彼はクールなんだ、クール。英語ではクールって言うんだ。タツはクールだよ! だから彼を好きになった。年を重ねて友達として彼を知るようになった。食事に行ったりね。もっと個人的な友情関係になった。何年もかけて築き上げた友情だ。

『ビートルズを呼んだ男』より
スーパースターの頂点を極めたマイケル・ジャクソンと。彼の来日は当時奇跡と言われた。左は元キョードー東京会長の嵐田三郎氏。

おしゃべりじゃないから好きになった

——彼はおしゃべりでしたか?

【ポール】ノー。彼は必要なときだけ話した。センスがある。必要なだけ話した。ディナーに出かけたときは楽しかったよ。(仕事に関係なく)普通に会話ができたからね。それで彼は、年々ぼくの家族とも仲良くなった。彼はぼくの子供たちの成長を見ている。

その頃からぼくは彼のやったことを知った。だから彼がキョードー(東京)を作ったこと、ナット・キング・コールやシナトラを日本に呼んできたことも教えてもらった。ビートルズに出会う以前に彼がやったことを知った。でもタツを有名にしたのはビートルズ!

——(笑)ありがとうございます。あとひとつだけ質問してもいいですか?

【ポール】どうぞ。

——あさってからスコットランドに行くのです。マル・オブ・キンタイア(キンタイア半島の岬)へ行きます。あなたが1977年に出した「夢の旅人」(原題はマル・オブ・キンタイア)が好きなんです。

【ポール】そうなの? あの曲が好き?

——はい。

【ポール】いいね。でもねえ、きっと寒いと思うよ。スコットランドに行くときはいい天気を期待しちゃいけないっていうんだ。景色はさぞ美しいかもしれない。でもあっちは真冬だ。北に位置しているからね。ここロンドンとは気候が違う。