反対意見を言いづらい「キツい職場」

一方、「心理的安全性は低いが、仕事の基準は高い」ような職場はどうでしょうか。これは、チームや組織からの助けや、相談に乗ってくれる人はいないが、高いノルマは課せられる営業チームを考えると、イメージしやすいのではないでしょうか。

「キツい職場」は、一見、「士気」が高く見える側面もあります。

しかし、「キツい職場」では本当に必要なはずの反対意見を述べたり、根本的な意義について問い直したり、目的を確認することは忌避されます。「余計なことは考えず、成果を出せ」と言われるのが、この「キツい職場」なのです。心理的安全性の低い「キツい職場」では、「罰を避けるため」にメンバーは努力します。

果ては「部長対策マニュアル」まで作られ…

筆者が昔、目の当たりにしたことのある「キツい職場」(誰もが知っている日本の大企業)では、部長が「すぐ怒鳴る」「報告書のミスをあげつらう」など、いわゆる厳しく統治するマネジメントスタイルでした。一方で、部長は優秀な方でしたので、自分のスタイルでは、報告が集まらないことを自覚されていたのか、「悪い話も報告はすぐ上げろ」と部下には厳しく命令していました。

部下からすると、報告しても怒られる、報告しなくても怒られるという地獄の始まりです。しかし、さらに状況は複雑化していきます。

課長が、部長の顔色やタイミングを見て「○○くん、今だよ。いま部長は機嫌がいいから、すぐ報告にいきなさい」と指示をしたり、部長が帰り際にエレベーターを待っているタイミングで、「『いま連絡があったのですが……』と伝えれば、部長も帰りたいので怒られても短時間で済む」といった「ライフハック」を生み出したのです。果ては、部内で共有回覧される「部長対策マニュアル」が整備されました。「クライアントと一緒に部長報告に行けば、クライアントの前なので怒鳴らない」「基本的に他人の意見は否定するので、情報を用意して自分で結論・方針を思いつかせる」などの詳細な記載まであるマニュアルです。

この内向きな仕事を、成果を上げる方向に向けられていたら、この部署はどれほど生産性が上がったことでしょうか。

この「キツい職場」式のマネジメントは、ついマネジャーが「厳しく指導をしている」という実感と共に陥りがちなマネジメントスタイルです。罰の大本である上司が、実際には細部まで監督しきるのは難しい上、上司が監督し切れない細部には魂が宿りません。さらに「上司対策」に時間が使われたりと、実はメンバーがポテンシャルを出し切るためのマネジメントコストが高いのです。また常に監督できなくなるため、リモートワークの状況で特にマネジメントが機能しにくいのが、この種の「キツい職場」なのです。