成果を出す「学習する職場」

最後に、右上の心理的安全性・仕事の基準ともに高い職場こそが「学習して成長する職場」です。つまり、本稿で私達が目指す、社会の変化にうまく対応し、挑戦や実践から学び、結果として成果の出る職場です。

石井遼介『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)
石井遼介『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター)

言い方を変えれば、心理的安全性を機能させるものが「基準の高さ」であり、本稿で目指すのは、単に心理的安全性が高い(けれども基準が低い)組織・チームではなく、心理的安全性も、仕事の基準も、双方が高い成果の出る組織・チームです。

「学習する職場」と心理的安全性の高低だけが異なる「キツい職場」と比較してみると明確になることがあります。それは、どのように高い基準を保つかということです。

高い基準を保つために、「キツい職場」では罰や不安でメンバーを努力させます。「成果を出せ、さもなくば……」というスタイルです。もちろん、このスタイルでも「サムい職場」よりは成果が出るかもしれませんが、この努力の一部は、怒られないためや自分の身を守るために使われてしまいます。

「学習する職場」では衝突が多い

一方で、心理的安全性も仕事の基準も高い、この「学習と成長する職場」では、高い基準を保ち、人々を成果に向けて鼓舞するため、次の四つが努力の源泉となります。

・[サポート]成果が出ていない時にも、罰や不安ではなく相談に乗ってくれたり、アイデアをくれたりする
・[意義]組織・チーム・プロジェクトとして、大義や意味がある目標設定がされており、やりがいや成長を感じられる
・[みかえり]まだ成果には至らなくとも、望ましい努力をしている時に承認や感謝を伝えてもらえたり、より適切な行動を促してもらえたりする
・[配置]適材適所で配置されることで、自発的・自律的に努力できるようになる

このように心理的安全性が高く、仕事の基準も高い組織では、実は「衝突(コンフリクト)」が促進されます。

心理的「非」安全な職場にいた場合、「衝突」をできるだけ避けるように調整し、仕事をしてきたという方もいるかもしれません。しかし、「健全な衝突」はむしろ業績にプラスとなるのです。

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