中学年以下の小学生は、親の年収と体力が比例している

続いて、家庭の社会経済的条件による体力の格差(結果の不平等)を検証します。

まずは家庭の経済的条件に焦点を当てます。図表6と図表7は世帯収入別、図表8と図表9は学校外スポーツへの投資額別に体力総合点を比較したものです〔世帯収入及び学校外スポーツ費(月別支出額)については、回答の分布状況に基づいてカテゴライズしました〕。

まず世帯収入については、高学年を除く学年段階において、体力総合点に有意な差が認められました。特に低学年と中学年の段階において、世帯収入の違いによる体力の差、すなわち低収入家庭の児童よりも高収入家庭の児童の方が体力総合得点は高いという傾向が顕著です(なぜ高学年で有意差が確認されなかったのかについては、さらなる検証が必要です)。

また、学年進行に伴う一貫した傾向は見られませんでしたが、年収400万円未満の家庭の子どもが、高所得家庭のグループに比べて明らかに体力が低いということは共通しています。

幼児期からのスポーツ投資が子どもの体力を左右する

次に、学校外スポーツへの支出額別に体力総合点を比較した結果を見てください。図表8、図表9に示すように、幼児期から中学生までの各学年段階において、いずれも有意な差が認められました。

特に、学校外のスポーツ活動に「ほとんど支出なし」の児童とその他の児童生徒との間に大きな体力差があること、また、「月に1万円以上」をスポーツに支出している子どもとの体力格差は、学年進行に伴って大きくなっていくことが明らかとなりました。

このことから、幼少期から家庭におけるスポーツ投資の成果が年齢とともに蓄積され、中学校期には大きな格差となって現れるのではないかと考えられます。

図表10は、家庭によるスポーツ投資の違いがどのような体力要素と関連があるのかを検討するため、体力テストの項目別に学校外スポーツへの投資額との関連を分析した結果を示したものです。

この結果から、①「シャトルラン」「50m走」のように投資額の違いが顕著に認められる(格差が生じやすい)ものと格差が生じにくい体力要素があること、②しかし、多くのテスト項目において、スポーツ投資額の違いによる体力格差は学年が上がるにつれて拡大し、中学校段階では、ほとんどのテスト項目で極めて大きな体力差となってしまっていることが明らかとなりました(紙面の関係上、男子のみの結果を記載しましたが、女子にもほぼ同様の傾向が見られました)。

特に、学校外スポーツへの投資による体力格差が大きくなるのは、男女ともに小学校中学年であるようです。そこで、3年生と4年生に分けてさらに分析してみたところ、4年生が体力格差の拡大期であることが明らかとなりました。