親は子どもが運動できる状況になることを重要視している

次に、各項目に対する必要度の高さに着目してみると、子どもの生活財は、以下のように五つの層に分類できるのではないかと考えます。(図表4)。

①「最低限の生活必需財」:毎日の朝ごはんや手作りの夕食、学校行事への参加のように50%以上の親が「絶対に必要」と回答した生活財
②「生活必需財」:病院に行くこと、子ども用の本など、50%以上が「絶対に必要」「かなり必要」のいずれかに回答した生活財
③「生活必要財」:誕生日プレゼント、お年玉、大学までの教育など、70%以上が「必要」と回答した生活財
④「中間財」:生活必要財と贅沢財の中間的な位置づけのもの
⑤「贅沢財」:携帯用ゲーム機やおもちゃなど50%以上が「必要ない」と回答したもの

ところで、調査26項目の中にスポーツにかかわる項目が7項目含まれていました。それらの項目が五つの層の中のどこに位置づいているかを確認してみると、「12.友だちとスポーツをすること」「18.運動遊びができる公園」「20.好きな運動やスポーツ活動をすること」は、「3.病院へ行くこと」等と並んで②生活必需財に属しており、また、「13.スポーツや運動をならうこと」や「23.親子での運動遊び」は、「5.誕生日プレゼント」などを含む③生活必要財に属していることがわかりました。

これらの結果から、現在の親にとって子どもが運動・スポーツ活動をできる状況にすることはかなり必要度の高いことであるととらえられているようです。

スポーツ格差はスクールカーストに影響する

次に、子ども側(小学校高学年及び中学生)に対しては、「あなたのクラスで“人気者(みんなから尊敬されたり好かれる人)”になるには、次のことがどのくらい重要ですか」と質問し、提示した10項目についてその重要さの程度を「とても重要」から「まったく重要ではない」までの4件法で回答してもらいました(図表5は小学校高学年の結果)。

その結果、「運動やスポーツができること、うまいこと」は、小学校高学年男子では「クラスをまとめられること」と並んで1位、女子でも「クラスをまとめられること」に次いで2位、中学校男子では3位、中学校女子でも4位であり、子どもたちにとってスポーツはクラスの中での相対的な位置(スクールカースト)を決める重要なファクターであると思われます。

以上のことから、現代の子どもたちにとってスポーツは、親のサイドからも子どもたち自身にとっても生活上かなり重要なポジションを占めているものと推察されます。

よって、スポーツが何らかの理由でできないとすればそれは一種の社会的な剥奪状態にあると見ることができるでしょうし、彼・彼女らの選択の余地のない家庭の社会経済的条件等によるスポーツ格差は当事者たちにとってもやはり重大な問題だといえるのではないでしょうか。