チャンスが巡ってきたときだけ行動する

バフェットのやり方はこうです。紙と鉛筆を用意して、自分が理解できる企業の名前を紙に書き、それを取り囲むように輪を描きます。次にその輪の中から価値に比べて価格が割高なもの、経営陣がダメなもの、事業環境が芳しくないものを選び、輪の外に出します。そして最後に輪の中に残ったものが投資対象となります。

では、もし輪の中に1社もないとすればどうするのでしょうか。

「自分の能力の輪の中にめぼしいものがないからといって、むやみに輪を広げることはしません。じっと待ちます」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)

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「チャンスが巡ってきた時だけ、行動する」というのがバフェットの考え方です。大好きな野球を例にこう話しています。

「投資の世界には、見送りの三振がありません。投資家は、バットを持ってバッターボックスに立ちます。すると、市場という名のピッチャーがボールをど真ん中に投げ込んできます。たとえば、『ゼネラル・モーターズ株を47ドルでどうだ』という感じで投げてくるのです。もし47ドルで買う決心がつかなければ、バッターはそのチャンスを見送ります。野球であれば、ここで審判が『ストライク!』と言いますが、投資の世界では誰も何も言いません。投資家がストライクをとられるのは、空振りしたときだけなのです」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)。

投資家は傍から見てどんな絶好球であっても、気に食わなければバットを振る必要はありません。自分の得意な球、好きな球が来るまでいつまでも待てばいいのです。

他の投資家やウォール街の見解にとらわれない

さらには野手(他の投資家やウォール街など)が眠ってしまったのを見計らってから球を打つこともできるとバフェットはいっています。

バフェットはチャンスが豊富にあるとは思えなくなったからこそパートナーシップを解散しましたが、やがてウォール街が「見通しがはっきりするまで、株の購入は見合わせた方がいい」と言い始めると、猛然と買い始めています。そこにはバフェットにとっての絶好球がたくさん存在していたのです。

バフェットはどんな業種であれ、一般にいわれることを鵜呑みにせず、自分の頭で納得いくまで考えます。手に入るものをすべて読み、調べ、考えます。そうやって出来上がったのがバフェットの「能力の輪」です。

「私は天才ではない。ある分野では高い能力を持ってはいるが、その分野以外には手を出さないのだ」(『バフェットからの手紙 第5版』ローレンス・A・カニンガム、パンローリング株式会社)はIBMの創業者トーマス・ワトソンの言葉ですが、バフェットも自分が理解できるものを守り続け、能力の輪によって自分が何をするかを決めることで世界一の投資家となったのです。