東京一極集中は時代遅れになる

【橋爪】これが日本にどういうインパクトを与えるか。東京一極集中は時代遅れになります。

東京はなぜ存在したか。情報の中心で、物流の中心で、集積効果があったからです。教育も消費にも便利で、働き場所もある。その働き場所(都心)に通勤できるように、郊外に向かって住宅を建てていった。ベッドタウンはいま空き家です。タワマンが一戸建てより好まれた。通勤時間がかからない。見栄えもいい。今さえよければいい、という考え方です。すぐ陳腐化して、資産価値のない物件になるでしょう。

東京に住むメリットはほぼなくなって、これから東京が縮小し、全域に分散する方向に進む。ホワイトカラーはいらないからです。

というふうに、日本はスカスカになっていって、付加価値をどこで生産するのか、という話になる。こういう見立てですが、どうでしょう。

「富裕層の東京」と「スラム化する東京」が共存する

【佐藤】東京の位置付けについては、私は少し違う見方をしています。

たしかに東京の空洞化は、ある程度進むでしょう。乱立しているタワーマンションも、いくらかはスラム化すると考えられます。ただ、六本木ヒルズをはじめとした特定のタワーマンションや、築年数が多くてもデザイン的・歴史的価値の高い、いわゆるビンテージマンションに住める「中の上」以上の人々、富裕層は東京から動かないでしょう。

その最大の理由は何かというと、皇居が東京にあるからです。これは私の皮膚感覚なのですが、皇居なりバッキンガム宮殿なりクレムリンなりの5キロ圏内に、政治、経済、軍事、国際、あらゆる情報が集中します。いくらインターネットがあっても、人と人の間で直接かつ即時的に交わされる生きた情報の価値というものがある。ということで、東京の空洞化は程度問題になると見ているのです。

写真=iStock.com/BrendanHunter
※写真はイメージです

【橋爪】そうかもしれません。でも、職もなく生活費も高いと、とても住めませんね。

【佐藤】ですから東京に住むのは、富裕層と、その富裕層の生活を支えるエッセンシャルワーカーになっていく。「富裕層の東京」と「スラム化する東京」が、同じ東京の中で道ひとつ隔てて共存していくのではないかと私は見ているわけです。