年収2000万~3000万円の層は厚くなっている

【佐藤】また、先ほどAmazonにも触れられましたが、着々と力をつけているGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に関しては、ある時点で国が公権力の暴力をむき出しにして、解体に乗り出すと思います。あくまでも印象論の段階ですが、これらの企業がいくら人々の生活の合理性や効率性に寄与するものであるとしても、力をつけすぎる前に分割されていくのではないかと。

橋爪大三郎・佐藤優『世界史の分岐点 激変する新世界秩序の読み方』(SB新書)

【橋爪】そういうことを言い出す政治家が、必ず出てきそうです。

【佐藤】実は私も、そう思っている一人です。

さて、もう1つ皮膚感覚の話をすると、先ほど挙げた「中の上」、年収でいうと2000万~3000万円くらいの層は、中産階級の没落と共に分厚くなっている感じがします。

たとえば、このコロナ禍で社用の会食がほぼゼロになり、ホテルのレストランなど高級店も多くが休業している。たまに営業しているレストランに行ったりすると、客の大半はプライベートで来ている様子です。会社の経費ではなく、自費で高級レストランに行く。それができる層ですね。

富裕層でないと子供に高等教育を与えられない

【佐藤】また、私が教えている同志社大学の学生には、年に1000万円単位の仕送りを受けている学生がいます。慶応大学で教えている先生に聞いても、ブラックカードを持っているなど、明らかに富裕層の学生が増えているという話です。同志社の標準的な学生を見ても、下宿生ならば学費を含め年間350万円程度の仕送りを受けないと専門書を買ったり、語学学校に通ったりすることができません。事実、これくらいの仕送りを受けている学生が少なからずいます。そうなると、私が教えている学生の多くは大学院まで行きますから、教育に1500万円ほどを投入できる家庭でないと難しい。

【橋爪】アメリカの大学にも、富裕層の学生がゴロゴロいて、似ています。

【佐藤】ただし、それほどの額を投入できる富裕層はやはり限られています。そうなると、我々の世代よりも、次の世代のほうが高等教育を受ける人の割合が減る。そういう教育の右肩下がりの時代に確実に入っているという強い皮膚感覚がありますね。

【橋爪】その危機感が日本は足りませんね。その話を、つぎにしましょう。

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