小国を窮地に追い込んだ中国が失ったもの

しかし、リトアニアに対する強硬姿勢によって、中国が失いつつあるものも決して小さくないことには留意しておく必要があろう。

例えば、2020年末にドイツのメルケル首相が主導して基本合意にこぎつけたEU・中国包括的投資協定(CAI)は、中国の人権状況をめぐって中国とEUとの軋轢が鮮明になり、欧州議会が2021年5月に凍結を決めていた。

中国側は依然としてCAIの凍結解除を望んでいるとされるが、中国がEU加盟国への敵対行動を続ける以上、CAIの復活は絶望的である。

さらに、この一連の中国の言動で明らかとなった中国の「小国蔑視」は、これまで中国と密接な経済関係にあった中・東欧諸国の中国離れを確実に加速させている。

チェコやスロバキア、ポーランドなどの中・東欧諸国はリトアニアに続けとばかりに、台湾へのワクチン提供や要人の相互往来を、もはや中国に臆することなく展開している。

中国のさまざまな措置は徐々にリトアニアを窮地に追い込んでいるが、それと引き換えに中国は、かつてのような欧州諸国との良好な関係を、自ら手放しつつあるともいえるのである。

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