「みんなそうしているから」が目を曇らせる

問題はウォール街の投資判断や横並び意識にありました。たとえば1973年にワシントン・ポストが大きく株価を下げたことがあります。バフェットによると、当時の同社の資産価値は4億ドルありましたが、株価が大幅に下がったことにより時価総額は8000万ドルにまで下がっていました。売りは売りを呼びます。

では、同社株を手放した人々がどんな理由で株を売ったかというと、ほとんどは「マスコミ株が下げているから」とか、「みんなが売っているから」という理由です。理由はそれ以上でも以下でもありません。つまり、「みんなそれほど確固たる理由はないのである」がバフェットの見方でした。

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前例踏襲でリスクを回避したつもりが

これはウォール街に限ったことではなく、「同業他社が行えば、企業は無意識に追随する」(『バフェットからの手紙』)とバフェットは指摘しています。

企業というのは前例踏襲を好み、同業他社がやっていると「では、うちも」と安心をするところがあります。新製品を開発する際、どこもつくっていないものにはリスクを感じますが、同業他社が出していて良く売れていれば、それよりちょっといいものを出せば売れるだろうとゴーサインが簡単に出る傾向があります。

ある大手メーカーでは、新製品の企画書に同業他社の販売データを付けるのが慣例となっていました。しかし、それでは他社の真似ばかりになると不安を感じた製品開発担当者がどこもつくっていない製品の企画書を上司に提出したところ、上司から返ってきたのは「お前は俺を首にしたいのか」という反応でした。

他社と似た製品であればある程度の数字が予測できますし、失敗のリスクもあまりありませんが、どこもつくっていない製品を出して失敗すると、それは責任問題になるというのが上司の反対理由でした。