一人でやるからクリエイティブになれる

こうした横並び意識は問題行動や不祥事においても発揮されます。

2006年、アメリカ企業100社以上がストックオプションの権利付与日付を不当に操作したとして大きな問題になりました。日付操作とは、経営陣が故意にストックオプションの付与日を操作して、自分たちが受け取る利益をかさ上げする行為を指します。バフェットの会社バークシャー・ハザウェイは日付操作とは無縁でしたが、バフェットは傘下の企業に向けてこんな呼びかけを行いました。

「他社が問題含みの行動をしているから、わが社が問題含みの行動をしても大丈夫とは思い込まないように(中略)ビジネスの世界で最も危険な言葉は、五つの単語で表現できます。『ほかの誰もがやっている(Everybody else is doing it)』です」(『ウォーレン・バフェット 華麗なる流儀』ジャネット・タバコリ著、牧野洋訳、東洋経済新報社)

「画期的な製品を生み出せる可能性が一番高いのは、1人で仕事をする時だ。委員会じゃダメ」はアップルのもう1人の創業者スティーブ・ウォズニアックの言葉ですが、株式投資においても横並び意識、業界の常識にとらわれたやり方、多数決重視の委員会といった「誰も責任をとらない大人数から生まれた判断は、優れたものにはならない」(『バフェット&ゲイツ 後輩と語る』センゲージラーニング編集・発行、同友館)とバフェットは言い切っています。

バフェットの成功は、たった1人でニューヨークから遠いオマハで開業をして、重要な決断は「鏡を見て行う」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)というやり方がもたらしたものなのです。

格付け会社の意見も全く気にしない

投資の世界にはたくさんのアドバイザーがいます。ウォール街の住人もいれば、格付け会社もあります。しかし、バフェットはこうしたアドバイスをまったく相手にしようとはしません。

1983年と84年、バフェットはワシントン電力公社の社債を1億3900万ドル購入しましたが、これは格付け会社によるとただの紙切れになるリスクが極めて高い、投資には適さないものでした。しかし、バフェットはまるで意に介しませんでした。

「私たちは、格付けを基に判断しているわけではありません。もし格付け会社のムーディーズやスタンダード&プアーズに投資資金の運用を任せたいのであれば、とっくの昔にそうしています」(『ウォーレン・バフェット 自分を信じるものが勝つ!』)