また、9月9日の日経新聞「経済教室」では、慶応義塾大学の櫻川昌哉教授が「量的緩和は今や、財政ファイナンス(財政赤字の穴埋め)の道具と化し、肥大化する財政の受け皿となった。資産規模の拡大は、中央銀行の信用失墜と機能不全の予兆と受け止められつつある」と書かれている。

日銀の信用失墜と機能不全のいきつくところはハイパーインフレだろう。

前回の利上げ時(2015年から)、連邦準備制度理事会(FRB) は債務超過にならなかったのになぜ日銀の債務超過を心配するのか?

私が日銀の債務超過リスクをSNSに書いた時、「ならFedは金利上昇した時債務超過になりました?」との皮肉っぽいリツイートが届いた。たしかにFRBは2015年から2018年まで「0.0%~0.25%」から「2.25%~2.5%」への利上げを数度にわたって行ったが、債務超過にはならなかった。だからと言って日銀も債務超過にならないとは言えない。

以下の表を見ながら説明する。

日米中央銀行の収益の差

前回の利上げ開始時(2015年)のFRBの純損益は999億ドル(約11兆4000億円)だったのに対し、同じく利上げ前の現在の日銀(2020年度)の税引き前純利益は1兆4529億円に過ぎない。たったの10分の1強だ。

とはいえ、当時のFRBが日銀の10倍の資産を保有していたわけではない。

コロナ禍でFRBも大きくバランスシートを膨らませたにもかかわらず、2021年5月時点のFRBの保有資産は8兆ドル(約880兆円)で、日銀の724兆円とほぼ同規模なのだ。

両中央銀行の大きな収益力の差は資産規模の差から来るものではなく、保有債券の利回りの差によるものだ。

話は少し脱線するが、経済規模が米国の4分の1しかない日本の中央銀行が、FRBとほぼ同じ規模のバランスシートを保有していることは異常だ。中央銀行の主たる負債は発行銀行券と民間銀行が中央銀行に置いてある当座預金である。

この対比から日銀が対経済規模比でいかにお金をばらまいているかがわかる。日本ではインフレが始まったら、すぐに燃え上がる可能性があるということだ。油をまいた乾いたマキの上に座っているようなものと言える。

もう一つの驚きは、日銀の利益1兆4529億円のうち半分の7275億円が株の運用益ということ。本来、中央銀行は市況によって損益が大きく上下する資産は保有しないのが鉄則だ。債務超過となり中央銀行の信認が崩れ、通貨に対する信認が無くなるのを防ぐためだ。

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