株は運用益が多くなる時もあれば損が膨らむこともある。だからこそ世界の中央銀行で、金融政策目的で株を保有する中央銀行など日銀以外に無いのである。

過去の日本銀行も当然保有していない。その本来持ってはいけないはずの株式からの収益が純利益の半分であるなど、「え、それが中央銀行の決算書?」と言いたくなる。

利上げに日銀は耐えられない

参議院議員の時、日銀の黒田東彦総裁や若田部昌澄副総裁に「金利引き上げ時に日銀は債務超過になるのではないか?」と尋ねたことがある。

これに黒田総裁は「支払利息は増えますが受取利息も増えるので大丈夫です」とお答えになった。嘘ツケだった。よくもそんなハッタリが言えると思ったものだ。

私の金融マン時代と異なり、今の日銀の保有国債は大部分が長期債だ(2021年9月末の保有国債528兆円のうち長期国債は509兆円)。長期国債は固定金利であり、満期が来るまで受取利息は変わらない。満期が来た分だけしか新しい金利に置き換わらない。

私が金融マンの時のように日銀保有国債の大半が3カ月未満の国債で、利上げ時、すぐに高い金利の債券と入れ変わる時代とは違うのだ。ここで図表1を見てみよう。

FRBの受取利息も2015年の1136億ドルから2018年の1123億ドルとほとんど増えていない。理屈通りの動きだ。黒田総裁や若田部副総裁がなんとコメントするか聞きたいものだ。

パウエル氏
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長(写真=『Federal Reserve History』HPより)

2015年の0.0%~0.25%から2018年の2.25%~2.5%までの政策金利引き上げは、民間金融機関がFRBに預金している当座預金への付利金利を上げることによって行った。

量的緩和をした以上、それしか政策金利を上げる方法は無いと言われている。したがって支払利息は当然のように2015年の72億ドルから2018年の430億ドルへと急増した。

受取利息が増えないのに支払利息が増えたのだから、当然の結果として純利益は2015年の1064億ドルから2018年の692億ドルへと急減している。もしFRBが更なる利上げを継続していれば純利益はいずれは損失に変わっていただろう。

日銀が利上げをすれば“債務超過”一直線

FRBの例でみたように利上げ時期になると中央銀行の利益は急速に減少を始める。

では日銀はどうなるであろうか?

現在の日銀の収益は、先ほど見たように2015年のFRBの純利益の10分の1強の1兆4529億円に過ぎない。万が一利上げが始まり株価が下落して株の運用益が無くなれば、7000億円から8000億円とさらに少なくなる。

一方、支払利息の方は1%ごとに5.41兆円の支払いだ。日銀当座預金残高が541兆円もあるからだ(2021年9月末)。FRBと異なり少しでも政策金利を引き上げると純利益が損失に変わり損の垂れ流しが始まるということだ。

資本金は1億円しかないし、引当金+準備金も10.3兆円しかない。簡単に債務超過に陥る。