売れ行きは工場が大ロットで生産しようが、小ロットで生産しようが変わりはありません。しかし、出費は変わってくる。大ロットで作ると在庫が増え、倉庫に製品が積み上がる。製品は寝ているが金利はかかる。また、製品が汚れないように棚を作ったりしなくてはならない。何がいくつ在庫されているかを勘定するための人員も必要になってくる……」

つくりすぎのムダは在庫というムダを生み、在庫がたまると管理する場所や人間を確保しなくてはならなくなる。つくりすぎのムダはさまざまに波及するから諸悪の根源なのだ。

次に、手待ちのムダとは何か。手待ちとは作業をしたいけれど、部品が届かず、ラインでやることがない状態をいう。ラインに必要以上の人間がいると起こるムダだ。解決するにはラインの人員を減らすしかない。

ただし、「人を減らす」という指示は現場の反発を受けた。現場にしてみれば、せっかく仲良く働いていたチームのなかから仲間が抜けていくわけだ。

人を増やせばモノがたくさんできるわけではない

抜けたからといって、クビになるわけではない。違うラインに行くだけのことなのだが、残った人間にしてみれば寂しいし、また、仕事が増えることが懸念される。

手待ちのムダについて、張は大野がバレーボールを例に挙げたと説明している。

「大野さんがある日、張、お前はバレーボールを知っているか、と。はい、僕らの学生時代は9人制でしたけれど、いまは6人制ですね。そう答えたら、そうだ、その通りだ、と。

コートのなかに9人もいるのは、果たして強いのだろうか。回転レシーブをやったらぶつかるんじゃないか? 私(大野)は聞いたことはないけれど、6人のチームと9人のチームが試合をしたら、勝つのは6人じゃないか。

これは現場でも同じだと大野さんは言いました。人が増えればモノがたくさんできるかと言えば、そんなことはない。僕(張)にも経験があるのですが、能力が足りません、どうしても数が出ませんというところへ行って、いろいろ直して、結果的に人を減らしたら、できるようになったということは何度も経験しています」

作業者を苦労させるのではなく、やりやすくする

現場に中間倉庫、あるいは部品の山があるとする。すると、作業者は仕事の合間に部品を取りに行かなくてはならない。トヨタ生産方式を導入した当時、まだ中間在庫の置き場が現場にあった。大野が見ていると、作業者が部品を組み付けている時間よりも、部品を探しに行ったり、運んでいる時間の方が長かったのである。それもあって、大野は倉庫や部品置き場を一掃しようと決めた。

動作のムダとは現場の人の動きを見て、ムダを見つけることだ。