真っ先に意見を聞かれ、鍛えられた

中島さんのキャリアを振り返ると、所長、支店長、執行役員、取締役、社長といずれも「女性初の」がついて回る。苦労も多かったが、家では家族に、職場では浅田会長に幾度となく救われた。

社内会議に参加する中島伸子さん(右端)。2020年8月撮影(写真=井村屋グループ提供)

例えば取締役会では、男性ばかりの中で必ず真っ先に意見を聞かれた。他の人の意見を聞いた後では、自分が違う意見を持っていてもなかなか言い出しにくいもの。その場でたった一人の女性ならなおさらだ。それを見越してか、浅田会長は最初の発言者に毎回中島さんを指名した。

「会長自慢で申し訳ないですが、人を育てるのが本当にお上手なんです。会議では最初に指名されるから、前もって勉強していかなきゃいけない。そのおかげでだいぶ成長させてもらいました。だから私も今、会議で意見を聞くときは若手から順に指名しています。自分の意見を言うのは一番最後ですね」

人を育てるという点では、井村屋グループでは以前から通信教育の受講も推奨している。2015年ごろまでは高卒入社の社員が受講することが多かったが、職分制度を撤廃して「全員総合職」にしてからは女性や大卒入社の社員も利用するようになり、受講者数は約2倍に増えた。

現在では、キャリアコンサルタントやビジネス実務法務、管理栄養士といった資格を持つ人が多数。グループ社員は約900人だが、全体の取得資格数は1300件にものぼっている。この数字からは、社員一人ひとりが成長したいという意欲を持つ「学習する組織」になってきている様子が見てとれる。

写真=井村屋グループ提供
2018年、大阪市であずきバーのサンプリングイベントに参加する中島伸子さん(中央)