巨人のスタメンには「生え抜き」が多い
巨人の「ミスター」は長嶋さんだけ。阪神は複数存在する。
すなわち歴史的に、巨人は「チーム力」で戦ってきた。阪神は「個の力」を中心に戦ってきた。その違いでことごとく叩きのめされてきた。
繰り返しになるが、僕は阪神二軍監督時代、「ひとりに強くなれ」とよく言った。
自分がうまくなるための練習時間を作って、なんだかんだ言っても、自分自身でのし上がらなきゃ、誰も手助けはしてくれない。
個の力を強くする。小さな個の集まりよりも、大きな個の集まりのほうが強いのは当たり前だ。
「ミスター・ラグビー」と称されたラグビー元日本代表選手/監督の平尾誠二さんが、こんなことを言っていた。
「個人のスキルを上げろ。小さな点みたいな個を集めたって、小さな個にしかならない。レベルの高い個が集まれば、大きな個ができる」
一方、巨人はチームを活性化するために、他球団から戦力を大補強するイメージが強い。
2018年まで阪神のオーナーだった坂井信也さんと一緒に阪神-巨人戦を見たときに、オーナーからすごく面白いことを言われた。
「掛布さん見てくださいよ。巨人のスタメン、4人がドラフト1位ですわ。阿部慎之助(2000年)、坂本勇人(06年)、小林誠司(13年)、岡本和真(14年)。阪神のドラフト1位は4人いますけど、全部ベンチですよ」
巨人は大補強もするけれど、なんだかんだ言って、「生え抜き」が中心なのだ。
阪神ドラフト上位の打者は育っているか
1965年のドラフト制導入以降の55年間、阪神のドラフト1位・2位で打撃3部門のタイトルを獲得したのは、藤田平(65年ドラフト2位、81年首位打者)、田淵幸一(68年ドラフト1位、75年本塁打王)、今岡誠(96年ドラフト1位、2003年首位打者・05年打点王)のわずか3人しかいない。
参考までに、同じく阪神のドラフト1位・2位で最優秀防御率、最多勝、最多奪三振、最優秀勝率、救援のタイトルを獲得したのは、江夏豊(1966年ドラフト1位)、山本和行(71年ドラフト1位)、中西清起(83年ドラフト1位)、井川慶(97年ドラフト2位)、藤川球児(98年ドラフト1位)、安藤優也(2001年ドラフト1位)、能見篤史(04年ドラフト2位)、藤浪晋太郎(12年ドラフト1位)の8人だ。
今後、阪神も生え抜きを軸としたチームに変わらなくてはならない。
現状では、大山悠輔(2016年ドラフト1位)、近本光司(18年ドラフト1位)、井上広大(19年ドラフト2位)、佐藤輝明(20年ドラフト1位)の4人を打線の核としたチーム編成になるのではないだろうか。