朝日社説は批判ばかりで、岸田首相を評価する余裕がない
12月7日付の朝日新聞の社説は「衆院選で国民の信任を得た岸田首相が、初めて本格的な論戦に臨む臨時国会が召集された。安倍・菅両政権下で傷つけられた『言論の府』を立て直す出発点にしなければならない。首相が掲げる『丁寧で寛容な政治』の内実が問われる」と書き出した後、こう批判する。
「(所信表明演説で)国際線の新規予約停止をめぐる朝令暮改には触れなかった。国土交通省の事務方の判断とはいえ、混乱を招いた経緯は、首相自身の口から詳しく説明する責任がある」
自民党政権を嫌う朝日社説だけに批判は手厳しい。岸田首相が「批判は、私がすべて負う」とまで述べたのだから、まずは塩を送ってもいいのではないか、と沙鴎一歩は思う。いまの朝日社説は対峙する相手を評価する余裕がない。
この後も朝日社説は次々と批判する。
「看板政策の『新しい資本主義』の実像もまだ見えてこない」
「核兵器禁止条約については、今回も触れなかった」
「首相のきのうの演説は、安倍・菅両氏の過去の所信を上回る長さだった。しかし、単に言葉数が多ければ丁寧というわけではない」
朝日社説のこうした批判を目にすると、どうしても気分が落ち込む。日本を代表する新聞社の社説として度量の大きさと深さを見せてほしい。
最後も朝日社説は「野党の厳しい質問もはぐらかさず、正面から答える。首相の言う『丁寧な説明』は、明日以降の質疑で試される」と主張するが、岸田首相には朝日社説の批判を跳ね返すような見事な国会答弁と政策の実行を期待したい。
防疫と社会・経済活動の両立こそ、いまの日本に欠かせない
12月7日付の読売新聞の社説は「所信表明演説 政策実現へ具体的な手順示せ」との見出しを掲げ、「変異株の国内流入を防ぎ、経済の再生を進めることが重要である。その具体的な手順を示し、着実に成果を上げていかねばならない」と書き出す。
防疫と社会・経済活動の両立こそ、いまの日本にとって欠かせない政策である。読売社説が主張するように今後は国民に分かりやすく、具体的手順を公表していくことだ。
読売社説はワクチンについて「肝心のワクチン供給が間に合うのか、はっきりしない。市町村への配分が進まずに混乱した今年前半の反省を踏まえ、十分な量を確保することが大切だ。余剰ワクチンの活用や、優先接種の基準づくりも急務である」と訴える。
「適量の確保」「余剰分の活用」「優先接種」はワクチン行政の基本である。世界各国に急速に広がり、感染力が強いとみられる新変異ウイルスのオミクロン株の出現に行政が動揺すると、こうしたワクチン行政の基本がないがしろになる危険性がある。ここは岸田政権にしっかりとしたリーダーシップを取ってもらいたい。
読売社説は最後に日米同盟に言及する。
「首相は、早期に訪米し、バイデン大統領と会談する意向を示した。北朝鮮のミサイル発射などを念頭に、『敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討する』と語った」
「強固で安定した日米同盟は、アジアの平和と繁栄に不可欠だ。日米が一体となって抑止力を高めるため、効果的な方法に関する議論を急ぐべきである」
岸田政権は新型コロナ対策に力を注ぐだけでは駄目だ。日本という国家の利益を守るには、内政から外交までしっかりとしたビジョンを持ってそれを目標に邁進していくことが重要である。なかでもアメリカとの関係をさらに確固たるものにしてそれを足場に中国や北朝鮮、ロシアなどと向き合っていかねばならない。