「対策で大事なのは、最悪の事態を想定すること」

11月6日、臨時国会が召集され、岸田文雄首相が衆参両院本会議で所信表明演説を行った。演説の中で目を引いたのは新型コロナ対策に向けた強い決意だ。

岸田首相は世界各国で感染を広げている、新たな変異ウイルスのオミクロン株の対応で水際対策を強化したことについて「対策で大事なのは、最悪の事態を想定することだ。状況が十分に分からないのに慎重すぎるのではないかとの批判は私がすべて負う覚悟だ」と語った。

行政改革推進会議で発言する岸田文雄首相(右端)。右から2人目は牧島かれん行政改革担当相=2021年12月9日午後、首相官邸
写真=時事通信フォト
行政改革推進会議で発言する岸田文雄首相(右端)。右から2人目は牧島かれん行政改革担当相=2021年12月9日午後、首相官邸

岸田政権は安倍・菅政権が「新型コロナ対策で後手に回った」と批判されたことを反省し、オミクロン株に対して先手先手の水際対策を取っている。「屋根を修理するなら、日が照っているうちに限る」というアメリカのジョン・F・ケネディ元大統領の名言も引用し、新型コロナの感染状況が落ち着いているうちに防疫を徹底していくことへの理解を求めた。

国土交通省による国際航空便の新規予約の停止要請は、航空各社への通知を出してわずか3日で取り消す事態となったものの、岸田政権に対する支持は上昇傾向にある。岸田首相の「批判は私がすべて負う覚悟」という決意の言葉に国民が期待しているからだろう。

読売調査では支持率は56%→62%へと上昇

たとえば、読売新聞社が12月3~5日に実施した世論調査では、岸田内閣の支持率は62%で前回調査(11月1~2日)から6ポイント上昇し、不支持率は22%(前回29%)となった。スピード感のある水際対策が評価され、全世界からの外国人の新規入国を停止したことについても「評価する」が89%だった。

読売新聞は自民党政権を支持してきた保守を代表する新聞で、保守層が読者である。しかし、そうした点を差し引いて考えても岸田内閣の支持率の上昇は確かな事実だ。

NHKの世論調査(11月5日~3日間実施)でも、岸田内閣を「支持する」と答えた人は、衆院選前の10月の調査より5ポイント上がって53%だった。一方「支持しない」と答えた人は、2ポイント下がって25%だった。

所信表明演説では、原則は2回目から8カ月以上の人が対象だったワクチンの3回目接種に関し、オミクロン株への効果をある程度見極めたうえで前倒しする考えを明らかにした。さらに岸田首相は「息の長い、感染症危機への対応体制」の整備も掲げた。具体的には、①国産のワクチンや治療薬の開発製造に5000億円規模の投資を行う、②ワクチンと治療薬を早急に薬事承認できるよう法整備を実施する、③来年6月までには司令塔機能の強化策をまとめる――と表明した。