精神が不安定なGAFAMの経営者たち
通常の時価総額は、企業がそのまま成長したら得るであろう利益をすべて現在価値に割り戻して計算する。ところが、20年7月にテスラの時価総額がトヨタと並んだ頃は約23兆円だったが、現在テスラの時価総額は1年あまりで5倍超になっている。20年は約50万台しか売っていないテスラが、台数では約20倍も販売したトヨタに対して、1年あまりで時価総額が約4倍となったことに説明がつかない。1番わからないのはマスク氏自身だろう。エープリルフールに「テスラは倒産します」とツイッターでジョークを言いたくなるほど、ワケがわからないのだ。
彼と同じ現象はGAFAMの経営者たちにも起こり、みんな精神が不安定になっている。最も不安定なのがザッカーバーグ氏だ。
彼はハーバード大学の学生時代にフェイスブックを立ち上げたが、他人のアイデアを盗んだと訴訟を起こされている。似たようなSNSで先行している企業もあった。いつの間にか先頭に走り出て、SNSの代表格になった理由は、彼自身も説明できないだろう。自分がコントロールできない企業をつくってしまったのだ。
フェイスブックはユーザー数が28億人以上でSNSでは世界トップだ。シェアが高く儲けすぎるから、情報を恣意的にコントロールしているのではないか、と叩かれている。元社員のフランシス・ハウゲン氏がアメリカ議会とイギリス議会の公聴会で「ユーザーへの悪影響を認識しながら、利益優先で安全対策を怠った」と告発した。しかし一方では、ザッカーバーグ氏自身も犠牲者かもしれないと話している。彼はすべてをコントロールできないが、ほかにコントロールする人間はいない。彼女のような社員が会社を変えたいと言っても、このザッカーバーグ&カンパニーは耳を貸さずに、「株主の期待に応えるため」と前進してしまうのだ。
ザッカーバーグ氏は夢遊病者のようにさまざまなことを考える。2019年に発表した仮想通貨「リブラ(Libra)」もその1つだ。ドル、ユーロ、円など既存の通貨を交ぜた加重平均のようなデジタル通貨をつくる構想だ。
彼の頭のなかでは、アマゾンやグーグルに対抗する自分なりの戦略だ。ユーザーはデジタル通貨をフェイスブックの財布に預ければ、他のサイトでも買い物ができる。アマゾンが強くても、自分たちがお客さんの財布を握っていればアマゾンより優位な立場になれるという幻想が、ある朝目覚めたら出てきたのだろう。
ところが、リブラはG7の財務相・中央銀行総裁会議でやり玉にあげられ、ザッカーバーグ氏は公聴会に呼ばれてサンドバッグ状態になった。内容を見直し、20年に「ディエム(Diem)」に名称を変更し、本部もスイスに移した。当初は20年発行の計画だったのが、まだスタートの見通しは立っていないし、実質的には休業状態に追い込まれている。