「けち」と笑われても財テクは欠かさなかった

すでに数千万円のお金があるのになぜか? いつロッテを戦力外になってもいいように。野球以外でやりたいことが見つかったときの運転資金にするためです。

2001年7月20日、フレッシュオールスターの最優秀選手(MVP)に選ばれた里崎選手。年俸が上がっても貯金の習慣は続けていた。写真=時事通信フォト

仮に5年でプロ野球をクビになったとします。月に10万円を貯金しているわけですから、その間に600万円を貯められたことになります。それを元手に、資格を取得するために専門学校に行ったりと、引退後の準備をするには十分な金額だろう──そういうプランを立てていました。

結果的にはプロ野球の世界に16年もいさせてもらうことができ、年俸だけでも十分に稼がせてもらいましたし、この積立預金は最終的に2000万円近くまで貯まりました。もちろん手をつけていませんが、あるに越したことはありません。

これを堅実と評価していただくか、けちだと嘲笑されてしまうのか。僕からすれば、そんなことどうだっていい。それだけお金に対して執着した結果、手元にたくさんのお金があり、人生を豊かにできているわけですから。

「野球選手が金を貯めてはダメ」という風潮

ロッテ入団1年目の年俸は1300万円でした(自分で書くのも変ですが、本書で出てくる年俸は推定とさせてください)。

前の年まで大学生で、1万円でも結構な大金だという認識だった僕にとってその額は天文学的な数字であり、さすがに度肝を抜かれました。

プロ野球選手は年俸制ですから、総額の12分の1の額が毎月振り込まれます。つまり、僕の「月給」は約100万円。さすがに最初はブランド物を買いました。なにを買ったか忘れましたけど。でも、散財したのはこれくらいで、あとは控えるようにしていました。

お金とは、捉えようによっては麻薬のようなものです。

いままで見たことのないような金額を、一夜にして手にしてしまった。または僕のように大金を稼げる職業に就くことができた。金銭面で余裕が生まれるわけですから、いつの間にか浪費癖がついてしまう。プロ野球界では、そういう人が多いです。

僕らの仕事は、基本的に夜型です。土日や祝日はデーゲームが多いですが、たいていはナイターで、試合が終わるのはだいたい21時過ぎ。

そこから選手たちは食事に繰り出します。これが結構、負担になります。お酒好きで飲み屋をはしごするような人であれば、一日のうちに数十万円使ってしまうこともざらです。

その点僕は、そこまでお酒が好きじゃありませんでしたし、毎日のように飲み歩くこともありませんでした。

たまに、後輩を4、5人引き連れてご飯に行き、自分がごちそうしたとしてもせいぜい10万円ちょっとです。だから僕は、夜の街への貢献度はかなり低かったと思います。