「野球選手が金を貯めてはダメなんだ」

プロ野球界にはそんな風潮が少なからずあります。お金を稼ぎ、ブランド物の服を着て、高級時計を身につけ、外車を乗り回す──そういう姿を見せて、野球少年に夢を与えたいんでしょうけど、興味がないものにお金を使うことこそ僕にとっては無意味なんです。

お金があればあるほど不幸を回避できる

ダメと言われようが、けちだと囁かれようが、僕にとってはお金が一番。

だから無駄だと感じたことには一銭も出したくないし、できるだけ貯金をしたい。プロ野球選手となり、お金を稼ぐようになってもそこだけは終始一貫していました。引退後のいまもそうです。

「お金では買えない大事なものがある」

よくそんな言葉を耳にします。そのこと自体は否定しませんが、生活で必要なものはお金で買える現実があります。「大事なもの」があるのは結構ですが、まずはそこから目を背けないほうがいいと思います。

何度も書かせていただきますが、お金があればあるほど不幸を回避できる確率が高くなり、幸福を得ることにも結びつきます。つまり僕は、できるだけ幸せをお金で買えるように、卑しいと思われても「お金が大事」を口に出すんです。

普段、着ているワイシャツは1990円
撮影=内藤サトル
里崎さんの近影

普段、着ているワイシャツは1990円

最近、ふとこんなことを思う瞬間があります。

「俺、今日、1円も使ってないんじゃないか?」

朝、自宅を出たときから、これまでの行動を時系列で追ってみる。すると、「あ、自動販売機でコーヒーを買ったわ」。残念、120円使っていました。

僕は必要以上にお金を使うことはありません。自分の趣味に使うお金だけで言えば、月に3万円、多くても5万円も使っていないような気がします。なにせ欲しいもの、とくに高価なものに対する物欲がないからお金が減らない。

僕はプロ野球解説という仕事柄、スーツを着ることが多いですが、かといって年間でそこに何十万円も使いませんし、シャツにしたってユニクロで買っていますから、せいぜい1990円です。テレビに出る、人前に出るからといって高いものを身につける必要なんてありません。

大事なのは見た目の清潔感です。僕はプロ野球選手時代、さまざまなスーツを購入し、若いころはブランド物を着ていたこともありました。高いものを買うと、質がいいものの基準ができます。いまでは安くていいスーツを知っていますんで、それで十分です。

高いものを知れば、安いものでも価値を見極められる。それまでには多少の出費はあるかもしれませんが、のちに生かされると思います。