日本では「砂入り人工芝」が根強い人気

一方、日本のテニスコートは、1980年代前半まで関西地方ではアンツーカーと呼ばれる赤土のレッドクレーコートが、関東地方では学校でよく目にする茶色い土のクレーコートが、そして全国的にはハードコートが多く見られました。

現在、ATP(男子プロテニス協会)・WTAツアーの大会として日本で開催される楽天ジャパンオープンや東レPPOが行われる有明コロシアムや、国際大会が開催されることが多い大阪靭公園テニスコートは、世界基準とも言えるハードコートです。しかし、一般で利用されるコートの大半は人工芝に砂をまいた「砂入り人工芝」。足腰への負担が少ない、日々の管理やメンテナンスが楽、小雨でも比較的安全にプレーできる、運営・施設の稼働率が比較的安定するといった理由から、1980年代半ばから民間クラブや地方自治体を中心に急速に普及していきました。

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人工芝の弊害

また、全豪オープンの主催者であるオーストラリアテニス協会が人工芝サーフェスの普及を積極的に後押ししたこともあり、1985年に神戸ユニバーシアードのメインコートに採用されたのをはじめ、日本でもその数はさらに増加。ジュニア大会や高校の大会なども砂入り人工芝のコートで行われるようになりました。

しかし、オーストラリアテニス協会は、この人工芝を数年間採用後すぐに現在のハードコートに転化。理由は感触が天然芝には程遠く、しかも他のタイプのサーフェスと全く異質のため、プレースタイルやゲームの組み立て方も変えなければならないからです。こうしたことから、ジュニア選手の育成にふさわしくないとして人工芝コートの普及を断念しています。

それなのに、日本国内では民間テニスクラブのほとんどがクレーコートやハードコートから砂入り人工芝コートに変わっているのです。

「砂入り人工芝」はもはや世界基準外

世界を目指すプレーヤーが戦うWTAツアー・ATPツアーの核であるグランドスラム、プレミアレベル、マスターズシリーズ、インターナショナルレベルといった主要な大会で、世界基準ではない砂入り人工芝コートの使用は認められていません。さらに、日本の砂入り人工芝コートで開催されている下部のITF国際大会でさえ、外国の有望な若手プレーヤーは大会へのエントリーをツアーカレンダーから外し、参加を見合わせることが増えています。もはや砂入り人工芝コートは国際大会における標準コートとしての位置付けにはなく、ジュニア育成・強化の観点からもその価値や役割を見出しにくい状況と言えるでしょう。