「なりたい自分」に向かって、なりふり構わず突き進む

2番目の強力な外発的モチベーター、それは「肩書報酬」です。大谷選手にとっては、レギュラーのポジションにあたります。組織の最前線において、責任ある立場で活躍する場所を与えられることは、プロフェッショナルにとって他の何ものにも代えがたい、魅力的な外発的モチベーターなのです。

そして、3番目の強力な外発的モチベーターは「裁量報酬」で間違いありません。最近の調査で、若い世代のビジネスパーソンが一番欲しがるのは「裁量報酬」であるという事実が判明しています。自分の仕事の裁量権をがっちり握る、すなわち責任と権限を持つということ。これも肩書報酬に勝るとも劣らない魅力的な報酬です。

あるとき、大谷選手はこう語っています。

「基本的に僕は何事も人に相談することが好きじゃなくて、人に相談する時は考えて考えて考え抜いた後にするって決めているんです」(NHKスペシャル『メジャーリーガー大谷翔平 自ら語る 挑戦の1年』2018年11月4日放映より)

「なりたい自分」を脳裏に鮮明に描き、それに向かってなりふり構わず突き進む。この単純な成功方程式こそが、大谷選手を偉大なメジャーリーガーに仕立てたのです。

あなたの人生の最高責任者は、あなた自身。このことをくり返し自分自身に言い聞かせましょう。あなたの人生にかかわる裁量権は、100パーセント、あなたが保持しているのです。

モチベーションそのものを喚起する3つの要素

大谷翔平選手が2021年シーズンにとてつもない成績を上げたことは、彼にたびたび訪れた人生の転機において、みずからが決断したことと無関係ではありません。

「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」とは別に、モチベーションそのものを喚起する要素が存在します。

それらは「希望系モチベーション」「緊張系モチベーション」、そして「持論系モチベーション」です。

以下に簡単に解説しましょう。

①「希望系モチベーション」(子どもの抱くモチベーション)

「夢」や「目標」を設定して、それを実現しようとするために働くモチベーション。キーワードは「希望」「夢」「目標」「憧れ」「達成感」「ロマン」。

②「緊張系モチベーション」(仕事人の抱くモチベーション)

達成期限を設定し、緊張状態を維持しながら馬鹿力を発揮するために働くモチベーション。キーワードは「緊張」「ハングリー精神」「焦り」「締め切り」「未達成感」。

③「持論系モチベーション」(一流人の抱くモチベーション)

自分が決めたやり方によって、それを貫徹するために働くモチベーション。キーワードは「自分が主人公」「裁量権」「マイペース」「反常識」「独創性」「自分スタイル」。

①の希望系モチベーションには好ましいキーワードが並んでいますが、じつは、夢や目標を抱くだけでは弱過ぎます。目標は「結果目標」と「行動目標」の2種類に分類されます。そして、多くの人たちが「結果目標」に偏り過ぎて、「行動目標」をおろそかにします。典型的な結果目標である希望系モチベーションをもつだけでは、前には進めないのです。

②の緊張系モチベーションは、けっしてバカにできないモチベーションです。仕事における「達成期限」や「締め切り効果」は、私たちに火事場の馬鹿力を発揮させてくれます。学生の方なら、テスト前の一夜漬けがこれにあたります。