投打の「二刀流」で大活躍した米大リーグ(MLB)エンゼルスの大谷翔平選手が、最高の栄誉である今季のア・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選ばれた。スポーツ心理学者の児玉光雄さんは「『なりたい自分』を脳裏に鮮明に描き、それに向かってなりふり構わず突き進む。この単純な成功方程式こそが、大谷選手を偉大なメジャーリーガーに仕立てた」という――。

※本稿は、児玉光雄『好きと得意で夢をかなえる―― 大谷翔平から学ぶ成功メソッド』(河出書房)を再編集したものです。

記者会見で笑顔を見せる米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手=2021年11月15日、東京都千代田区の日本記者クラブ
写真=時事通信フォト
記者会見で笑顔を見せる米大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手=2021年11月15日、東京都千代田区の日本記者クラブ

大谷を本気にさせている「内発的モチベーション」

モチベーションは、大きく分けて2種類存在します。それは「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」です。

大谷翔平選手を本気にさせているのが前者であることは言うまでもありません。探究心が彼に偉大な才能を与えたと、私は考えています。

あるとき、大谷選手はこう語っています。

「正解はないと思うんですけど、人は正解を探しに行くんですよね。正解が欲しいのは、みんなも同じで。『これさえやっておけばいい』というのがあれば楽なんでしょうけど、たぶんそれは『ない』と思うので。正解を探しに行きながら、ピッチングも、バッティングもしていたら楽しいことがいっぱいありますからね」「道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔」(扶桑社)

仕事を探すとき、「仕事内容が面白いこと」を第一に考える人がいます。しかし、趣味ならともかく、少なくともプロの仕事で内容の面白い仕事なんかないと考えたほうがいいのです。

仕事の多くは、日々のルーティンワークのくり返し。大谷選手にしても、ただ単純に数多くのボールを投げ、打つ練習は、典型的な面白くない作業です。しかし、「より良いバッティング」や「より速い球を投げるピッチング」をテーマに探究心をもてば、その面白くない作業も俄然面白い作業に変化するのです。

探究心にかんして、大谷選手はこうも語っています。

「どうしてできないんだろうと考えることはあっても、これは無理、絶対にできないといった限界を感じたことは一度もありません。今は難しくても、そのうち乗り越えられる、もっともっと良くなるという確信がありましたし、そのための練習は楽しかったです」「タウンワークマガジン2017年10月30日」

この情報化社会では、20世紀には重宝された「何でも知っている知識人」は明らかに時代遅れであり、もはやその価値は失われつつあります。「広く、浅く」から「狭く、深く」が、これからの時代のトレンドになることは間違いありません。