「自分だけの歴史観に閉じこもっている」と朝日社説
11月12日付の朝日社説は「時の指導者の権威を高めるように歴史認識を改め、国民への浸透を進める。こんな内向きな大国では、外の世界との距離を広げるばかりではないか」と書き出す。見出しは「中国6中全会 歴史を語る権力の礼賛」である。参考だが、「第6回総会(6中総会)」を朝日社説は「第6回全体会議(6中全会)」と日本語に訳している。
繰り返すが、歴史認識を改めて習近平国家主席の権威を高める行為は異常であり、異様だ。日本や欧米の民主主義国家では到底、考えられない。中国では一党支配のもとでの独裁者による国家支配が当然なのである。ここにいまの中国の本質がある、と思う。
続けて朝日社説は「言論統制の厳しい中国では、指導部が定める歴史観が教育などを通じて社会全体を覆っていく。歴史認識は本来、多様な見解と史実の検証を経て社会的に醸成されるべきものであり、時の指導部が自らに都合のいいよう自在に書き換える行為は独善というほかない」と断言するが、まさに「独りよがり」そのものである。「独善国家」が経済的にも軍事的にも世界で他国を圧倒し、いくつもの大きな問題を引き起こしている。独裁者の一人である習近平氏は協力や協調をどう考えているのか。
朝日社説は訴える。
「中国が豊かになったのは対外開放を進め、自由主義世界との協力や協調を進めたからだ。それを忘れて自分だけの歴史観に閉じこもり、さらには排他的な対外強硬姿勢を強めるようなことがあってはならない」
格差の是正は必要だが、統制の強化は問題
11月14日付の毎日新聞の社説は「中国共産党の歴史決議 国際協調乱す独善は困る」との見出しを付け、冒頭部分でこう指摘する。
「米中対立や経済の減速など内憂外患を乗り越えるには、強力なリーダーシップが必要だと、習指導部は権力の集中を正当化する」
「格差解消を意味する『共同富裕』を打ち出し、経済や社会への統制を強め、政治の安定を図ろうとしている」
もちろん、国を治めるにはリーダーシップが欠かせない。その国が大きければ大きいほどより強いリーダーシップが求められる。中国は14億を超える、世界1位の人口を抱える大国である。だからと言って権力を習近平氏を頂点とする支配層に集中させるのは、弊害が大き過ぎる。格差の是正は必要だが、統制の強化は問題である。弊害や問題の影響は中国国内にとどまらず、世界各国に波及する。