親が高齢期になると、子どもの影響は好転する可能性がある
子どもがいる人ほど幸福度が低い現実については、以前の記事「『子どものいる女性のほうが、幸福度が低い』少子化が加速するシンプルな理由」でも詳しく紹介しました。
反響が大きく、中には「子育ての渦中は大変だけれど、人生の総括をするような時期にどうなっているかが大切だと思う」といった感想もありました。では、高齢期にさしかかったときに、子がいるかどうかは幸福度にどのような影響をもたらすのでしょうか。
当然、子育てに伴う金銭的・時間的・肉体的な負担は、子どもの成長とともに変化します。
子どもが小さいときは時間的・肉体的な負担のウエートが大きく、ある程度成長すると今度は金銭的な負担のウエートが大きくなります。そして、子どもが働きだしたタイミングで子育てが一段落つき、さまざまな負担から解放されることになります。
その後、親が高齢になると、今度は逆に子どもから親へさまざまな支援が行われる場合があります。
支援には金銭的なものもあれば、普段生活する上での手助けや家庭での介護も含まれます。これ以外にも、子どもの存在が孤立を防ぎ、社会の人々と交流するための重要な役割を果たすとも指摘されています(※1)。
以上から明らかなとおり、親が高齢になると子育てに伴う負担が減少すると同時に、子どもからの支援が期待できるようになるわけです。
これは、「子どもの存在が高齢の親の幸福度により大きなプラスの効果をもたらす可能性がある」ことを意味します。
はたして実態はどうなのでしょうか。
※1 Huijts, T., Kraaykamp, G., & Subramanian, S. V. (2013). Childlessness and psychological well-being in context: A multilevel study on 24 European countries. European Sociological Review, 29(1), 32‐47.及びDykstra, P. A. (2009). Older adult loneliness: Myths and realities. European Journal of Ageing, 6(2),90‐101.
子どもの存在は高齢の親でも生活満足度を低下させる
図表1は、60歳以上の子どものいる既婚者と子どものいない既婚者の幸せの度合いを比較したものです。
なお、図表1では幸せの指標として、生活満足度を用いています。生活満足度とは、生活全般の満足度を0から10の11段階で計測したものであり、幸福度と並び、幸せの指標として多くの学術的研究で使われています。
この図のメッセージはシンプルです。
それは、「日本では男女とも、子どものいる高齢既婚者の生活満足度のほうが低い」ということです(この結果は、統計的な手法を用いて年齢、健康、夫婦それぞれの学歴・就業状態、世帯所得の影響を考慮しても変わりません)。
もちろん、子どもによる生活満足度へのマイナスの影響は、現役世代の場合よりも小さくなっています。ただ、マイナスの影響を持つ点は依然として変わりません。子どもの存在が高齢者の生活満足度の向上につながっているとは言い難い状況です。
高齢期においても子どもの存在が生活満足度を押し下げるというこの結果は、かなり衝撃的です。
子育て期ならまだしも、なぜ子育てが終わった時期でも依然として子どもの存在が生活満足度を押し下げているのでしょうか。
この原因が気になるところですが、これには2つの可能性が考えられます。