最新カプセルトイ事情
「一期一会」と言ったばかりだが、実はそうでもない。現在、一部の自販機には販売情報管理のためのPOSが取り付けられ、どの店舗にどの商品が置かれているのかが簡単に調べられるようになっている。
バンダイの場合は「ガシャどこ?PLUS」というサイトがあり、バンダイ商品に限ってだが、どの店舗で残数がどの程度かまでを調べることができるのだ。自販機にも、確実にテクノロジーによる進化が起きている。
「わかるのはアイテムまで。どのラインナップが残っているかまでは調べられません。そこまでわかってしまうと、ガシャポンの楽しみがなくなりますからね」(佐々木氏)
自分の手でハンドルを回してみるまでは、何が出てくるのかわからない。この体験までを含めて、カプセルトイカルチャーだということなのだろう。
自販機の進化はこれだけではない。4年ほど前から、キャッシュレス対応自販機が増えている。特に駅に置かれている自販機には、SuicaやPASMO対応のものが多いという。もう「百円玉がないから」と諦める必要はないのだ。
SDGsの流れにより、カプセルそのものの回収・再利用や、カプセル不要の商品の開発も進められている。
最高2500円のプレミアムガシャポン
高単価商品の登場も、ここ数年のトレンドだ。先述の「ガシャポンのデパート 池袋総本店」には、「プレミアムガシャポン」という高単価商品専用の自販機が置かれている。
「現在のカプセルトイのボリュームゾーンは1回200~400円。ですが、『プレミアムガシャポン』では2500円までの商品が販売できる設計になっています。
実際には『仮面ライダー』シリーズで販売した1500円のフィギュアが最高額ですが、販売価格が上がれば、できることも増える。将来的には、店頭で販売するようなおもちゃが自販機で買えるといいですね」(佐々木氏)
商品に使える予算が増えれば、これまで予算オーバーとされてきた商品も企画できる。エコバッグや巾着など、「日常的にちゃんと使える商品」が増えているのも近年のトレンドだ。第4次ブームでは、商品展開のバリエーションにも期待できるだろう。
しかし、高単価商品はあくまで選択肢のひとつ。カプセルトイ業界は、決して高額化にかじを切ったわけではないという。実用的なクリップ仕様の「はさむんです。でらっくす」は、200円とは思えぬ高クオリティが人気を博し、ミッフィーやサンリオ、クレヨンしんちゃんなどさまざまなシリーズが展開されている。
「日本人なら、誰でも一度はカプセルトイを買ったことがあるはずです。子どもの頃、初めてお小遣いを使った経験がカプセルトイだ、という人も多いのではないでしょうか。
私たちは、カプセルトイをもっとも手軽で身近な体験型物販と位置付けています。宝探しのような感覚で自販機を見てまわり、横から一生懸命中身をのぞき込んで、ほしい商品が出てくるのを期待してハンドルを回す。これを日本のカルチャーとして大切にしていきたいんです」(佐々木氏)
カプセルトイは、確実に進化しながらも、その文化を守っているのだ。