女性がハマる「ガシャ撮り」

しかし、前者の場合はかなり遭遇率が低く、あまりイメージもよくない。後者の場合、人目のある中で大人の女性がしゃがみこんでハンドルを回すのは少々勇気がいる。

明るく清潔感のある専門店であれば、まわりの目を気にせず入店でき、買い物と同じ感覚でカプセルトイとの出合いを楽しめるというわけだ。

「女性のお客さまは特に、売り場に設けたフォトスポットでの撮影を楽しんでいます。近年、カプセルトイには非常に精巧なフィギュアが増えています。それを撮ることで、ミニチュアの世界を自分で表現できる。

カプセルトイを提供するだけでなく、その楽しみ方も提案していきたいですね」(佐々木氏)

購入したアイテムを撮影できるフォトスポット
購入したアイテムを撮影できるフォトスポット(写真提供=バンダイナムコアミューズメント)

SNSの投稿を見て購買意欲を刺激され、「これだけたくさん自販機があれば目当てのものを買えるはず」と大型専門店を訪れる人も多いそうだ。

精巧なフィギュアの人気商品としては、『いきもの大図鑑』シリーズが挙げられる。クワガタ、カブトムシ、スズメバチなどの昆虫から、ヒョウモントカゲモドキやミツオビアルマジロなどの動物まで。価格は500~1000円。

『いきもの大図鑑』シリーズのヒシムネカレハカマキリ
『いきもの大図鑑』シリーズのヒシムネカレハカマキリ(©BANDAI)

毎月約200種の新商品が誕生

実際に見てみると、小さいながらどれも細部まで忠実に再現されている。虫が苦手なら触るのもはばかられるレベルではないだろうか。佐々木氏も「自販機で数百円で売られているフィギュアも、店舗で売れば数千円レベルの品質」と太鼓判を押す。

このクオリティーの高さが、大人の心をつかむのだ。

人気商品が生まれると、それに他社が続き、良い意味での競争が起きるのもカプセルトイの世界の定石だという。例えば、食べ物などをモチーフにしたユニークな指輪は各社から発売されているが、ファンからは「リング」シリーズと総称され、愛されている。

「肉リング」、「おにぎりん具」、シーチキンなどの「缶詰リング」、野菜の輪切りの「輪切リング」、卵料理の「黄身が好き。」、たこ焼きの「ゆびたこ!」、小鳥の「ことりんぐ」と、毎月のように新たな商品が生まれている。

黄身が好き。
黄身が好き。2(©BANDAI)

また、NORITZ給湯器の公式サウンドが聞ける「ガシャポンサウンド NORITZ 給湯器リモコン~おふろがわきました~」といったユニークな商品も根強い人気を誇る。

NORITZ-給湯器リモコン
NORITZ 給湯器リモコン(©NORITZ)

「毎月200種類ほどの新商品が生まれ、売り切れればそれで終わり。再販はほぼありません。人気が出ればシリーズ化され、第2弾、第3弾と、また違った商品が展開されます。

コアなファンほど、『今買わないと、もう買えないかもしれない』という感覚が強いでしょうね」(佐々木氏)

カプセルトイの一期一会なプレミア感は、間違いなく購入を誘発する要因のひとつだろう。