「わきまえる女」「飲み会を断らない女」でないと選ばれない

衆議院での女性の割合は、わずか約10%(解散前)。たったこれだけしかいない女性が、男性の世界で上にいくのは非常に難しいと解説するのは、ジェンダーと政治を専門とする上智大学の三浦まり教授だ。

「昔ほどではないが、今も政治家は、お金を集めたり、業界団体の意向を固めたり、そういうことで政治力を発揮する必要があります。ところが、経済界も地域社会も、すべて男性が力を握っている。そこに女性が出ていくとしたら『お姫様』として、かつがれるだけ。この構造を変えない限り、女性議員は増えません」と言う。この問題は政治だけの問題ではなく、社会のあらゆる構造的な問題でもあるのだ。

また、「『わきまえる女』『飲み会を断らない女』でないと選ばれないし、そういった女性しか登用されないので、『結局、女性議員がいても変わらないじゃないか』という失望も深まります」と悪循環を指摘する。

世襲は勝率8割、非世襲は3割

そもそも、女性に限らず、現在の日本の選挙は新規参入が難しいのだ。

日本経済新聞の最近の調査によると、1996年に小選挙区比例代表並立制が導入されてからの過去8回の衆院選では、比例代表での復活を含め、当選した人のうち新人は2割程度にとどまるという。

比例は、地元の利益を優先しがちな小選挙区候補とは異なり、有権者の多様な意見を吸い上げるための制度だ。しかし、比例が小選挙区落選者の事実上の救済手段になっているため、比例制度の良さを生かしきれていないという指摘も、専門家からはあがっている。

また、同調査では、現職が有利であるとともに、候補者全体の13%が世襲で、その勝率は、比例代表による復活当選を含めて8割にものぼる一方、世襲候補ではない人の勝率は3割にとどまっていることが明らかになった。

政党が弱い日本

この理由について三浦教授は、日本の選挙が政党中心の選挙ではなく、後援会の支持基盤を個人で作らなければならないという、個人単位の選挙だからだという。

「だからこそ、世襲候補が圧倒的に有利。政党が弱いのは日本の特色です」

アメリカの場合も、個人の地盤が大きく影響するが、党内の予備選挙に勝ち残れば、誰でも出馬できる。また、イギリスなども、国政選挙の前に党で予備選挙を行い、候補者を党員投票で決めている。

政策論議を行ってオープンに候補者を選考すること、候補者のトレーニングを行うことが、政党の一番重要な役割だが、日本ではこうした仕組みがないために、権力闘争の中で候補者が決まっているのだと三浦教授は指摘する。

もちろん、現職議員、世襲議員の中には優秀な人もたくさんいる。しかし、多様な意見を反映させるためにも新規参入の壁を低くし、政界の新陳代謝を促す必要があると感じる。