相続でもめるかどうかは「子どもの経済的自立」が関係
相続でもめるかどうかは、子どもの経済的自立とも関係しています。子どもたちが稼ぐ能力を身に付けていれば、親の財産を当てにする必要はありません。お金持ちは教育費を惜しまず、金銭教育もする人が多いので、経済的に自立した子どもが育ちやすい環境にあります。
たとえば、親が遺産分割について経済的に自立している子どもたちに相談をしても「お父さんの好きなようにすればいいんじゃないかなあ」と、お金にガツガツしないケースが多くみられます。
つまり、相続でもめないための最低限の条件は、相続人である子どもたちがしっかりと仕事をしていて、お金に困っていないことです。ただ、それでも「絶対にもめごとが起きない」と言い切れないのが遺産分割の難しいところです。
それまで穏やかでもめごとを起こすように見えなかった人が相続の発生と同時に豹変して、トラブルになることもあります。結婚していれば子どもには配偶者もおり、そういった周辺の事情から豹変することもあるのです。
なぜ遺産問題を先送りしてしまうのか
特に親子で遺産分割について話し合いが行われていないケースで起こりがちです。平等に相続をさせるケースでも問題が起こるので、何らかの理由があって遺産に差をつけるときには、なおさらその理由を明確に伝えておかないと子どもたちも納得しません。
少なく配分された子どもは金銭的な不満もありますが、親の愛情も減らされたように感じて反発したくなるのです。
遺産分割対策とは、節税対策のようにアパートを建てたり、保険に加入したりする大掛かりなものではありません。資産をどう配分するのか、なぜそのように配分するのか、分割対策が最も重要です。相続人が納得できるように生前に話をしたり、遺言書に書き記したりすることです。親の気持ちを真摯に伝えることで、回避できるもめごとは多くあります。
資産1億円を築くようなお金持ちは、一般的に金融リテラシーが高い人が多いと考えられます。つまり、遺産分割の難しさは十分に理解しているはずです。それでも対策を講じない人は少なくありません。面倒くさいこともあるのでしょうが、自分の死と向き合いたくないのが本音なのではないでしょうか。
相続対策を考えるには、自分が死ぬことを前提にしなければなりません。誰しも「いつかは死ぬ」ことを理解していますが、それが1年先なのか10年先なのか、はっきりしたことはわかりません。子どもたちと相続について話し合えば、子どもたちが自分が死ぬことを待っているように感じるかもしれません。だからこそ、考えることを先送りにしてしまいます。そうこうしているうちに突然やってきて、蓋を開けてみると「何の対策も講じていなかった」となるのです。