「時の権力者に近い者が特別扱いされる」という疑念

10月15日の朝日新聞の社説は「4年ぶり衆院選へ 民意に託された政治の再生」との見出しを掲げ、冒頭でこう主張する。

「日本の民主主義を深く傷つけた安倍・菅両政権の総括のうえに、政治への信頼をどう取り戻すか。少子高齢化など直面する課題への処方箋や、『コロナ後』も見据えた将来のビジョンをどう描くか。与野党は明確な選択肢を示して、有権者の審判を仰がねばならない」

「民主主義を深く傷つけた」はずいぶんな酷評だが、政権選択の選挙において「政治への信頼」は重要なテーマである。国民の信頼を失った政治家が、勝ち続けることは難しい。

朝日社説は「その後の党や内閣の人事、臨時国会での所信表明演説と各党の代表質問に対する答弁をみる限り、(これまでの路線の)転換よりも『継承』に近いと言うほかない。『安倍1強』体制が長く続き、党内から多様性が失われた自民党の限界が示されたといえる」と岸田首相を批判し、「首相には、森友・加計・桜を見る会といった、安倍政権下の疑惑を清算しようという意思はみられない。時の権力者に近い者が特別扱いされたのではないかという一連の問題は、政治や行政の公平・公正に対する疑念を招き、統治機構に対する信頼を著しく損なうものだった。これこそ、首相がいう『民主主義の危機』ではなかったのか」と皮肉る。

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岸田首相には総裁選に出馬表明したときの気持ちを取り戻し、党改革を進めてほしい。そうすれば、朝日社説の指摘する「時の権力者に近い者が特別扱いされる」という疑念も払拭ふっしょくされるはずだ。

「楽観姿勢」を捨て去り、「科学的知見」を重視するべき

10月15日付の毎日新聞の社説は「日本の選択 新型コロナ対策 危機に強い社会へ論戦を」との見出しを付け、「衆院が解散され、事実上の選挙戦が始まった。政府の新型コロナウイルス感染症対策への初の審判となる」と書き出している。この1本社説は、内容がすべて衆院選で議論すべき「新型コロナ対策」となっている。今後、連載の形で各テーマごとに分けて衆院選を社説で扱っていくのだろう。

毎日社説は主張する。

「岸田文雄首相は『危機対応の要諦は、常に〈最悪の事態〉を想定することだ』と繰り返している。かけ声倒れになってはならない。どのような『最悪』を想定し、どう備えるのか明らかにすべきだ」

いまの岸田首相を見ていると、どうしてもかけ声倒れになってしまうのではないかと不安になる。

毎日社説は「安倍晋三政権と、後を継いだ菅義偉政権に共通したのは、根拠なき楽観姿勢と、科学的知見の軽視である」と指摘するが、岸田首相はこの「楽観姿勢」を捨て去り、「科学的知見」を重視してもらいたい。

毎日社説は最後にこう訴える。

「新型コロナの危機が過ぎても、いずれ新たな病原体によるパンデミック(世界的大流行)が起きる。衆院選の論戦を、感染症対策の長期戦略構築への一歩としなければならない」

未知の感染症によるパンデミックは必ず再び起きる。新型インフルエンザウイルスによるスペイン風邪(1918年)やブタ由来のインフルエンザウイルスの大流行(2009年)を考えれば、よく分かるはずだ。感染症対策には長期戦略が欠かせない。