責任者不明の「空き家」が激増する
地価が高騰している時代には、どんなところであれ土地を相続できるのはありがたいことでした。しかし、今は「かえってお荷物」となり得ます。
自分が住むわけでもなく、借り手がつくわけでもない。それでも、持っていれば相続税がかかるのです。
相続した土地が都心の便利な場所にあれば、いずれ売れる可能性はあります。しかし、駅から遠いところや地方では、それもままなりません。
こうした物件は、持ち主だけでなく、地域社会にとっても悩みの種となります。
持ち主は、価値もない家にお金をかけるのは嫌だから手入れをしません。そのうちに、屋根ははがれ、窓ガラスは割れ、ネズミが徘徊する危険物件となっていきます。
周囲の住民は「せめて取り壊して更地にしてほしい」と望みますが、ただ家を壊すだけの目的でお金を出す持ち主は多くありません。
自治体は個人の財産権を理由に積極的には動きません。というか、自治体にも空き家問題に対処する財政的な余裕がありません。やがて、持ち主さえ死去してしまい、いったい誰が責任者なのかもわからない空き家が、地方や郊外を中心に激増するでしょう。
野村総合研究所の試算によると、2033年には空き家率は30.4%まで上昇する見込みだそうです。およそ3軒に1軒が空き家というとんでもない時代がすぐそこまでやってきているのです。
そして、そういう事態を恐れて多くの人がさらに都心に集中します。それができない人だけが荒れた地方に取り残されていくという二極化が、これから進行するでしょう。