高齢者が選んだ政治家のツケ
地方のインフラが保てなくなっているのは、前述したようにメンテナンスにあてるお金がないからです。
高度経済成長期には国からインフラ整備のお金がどんどん出たし、地方自治体もそれを大歓迎しました。自分たちの村や町が便利になるだけでなく、地元の建築業者にお金が落ちて、それによって税収が増えるといううまみがあったからです。
しかし、「その後のメンテナンスはどうするのか」については考えなかったか、先送りしてしまったために、今になって大きなツケが出てきているわけです。
図表1は、国土交通省が発表している「地域ごとの将来推計人口の動向」です。
東京でも地方でも、今後、人口は減り、高齢者の割合が大幅に増えていきます。
高齢者の政治的な発言力が強まる「シルバーデモクラシー」が言われるようになって久しいですが、それは、もはや深刻な域に達しています。
高齢者は、自分がもう生きていない未来のためよりも、目の前のことに税金を使ってくれる政治家に1票を入れます。老朽化したインフラも、別に無理に整備してもらう必要はないのです。
一方で、将来を大事に考える若者たちも1票を持っています。でも、その人口は高齢者より少ないので、いくら真面目に投票しても結局は勝てません。
となれば、なおさら、地方のインフラを新しくしていくことは困難なわけです。日本の崩壊は地方から始まっていくのです。
大都市やその周辺にとどまるほうがいい
コロナ禍では人混みを避ける傾向が強まり、またリモートワークも増えたために、都心から郊外や地方へと移住する人も出てきました。
僕自身についていえば、もともとフランスに住んでいながらリモートで日本の仕事をこなすことが多かったくらいですから、最初に述べたように、もし日本に帰るときが来たら田舎暮らしを選びます。
しかし、僕のようなケースはまれで、ほとんどの日本人は大都市やその周辺に留まるほうがいい。日本では、大学などの教育施設も、病院も、劇場も大都市に集中しており、便利な暮らしを享受するために、大都市にアクセスしやすい場所に住むべきなのです。
ましてや、人口が減ってくれば、都心の物件を入手するための倍率も下がるわけですから、一極集中はますます進むでしょう。人口が減少していく中で、生活を維持していくには、人々が集まって暮らすしか選択肢は残されていないのです。
逆に言えば、「その他の地域」は荒廃していく可能性大です。
すでに少子化は進行していたものの地価が暴騰していたバブルの時代には、一般的なサラリーマンにとって都心に住むのは夢のまた夢。
多くの人が「○○ニュータウン」と名付けられたような郊外のベッドタウンに家やマンションを買いました。
しかし、郊外のベッドタウンは、今後高齢化が進み、お金を使ってくれる現役世代がいなくなることで商店などが減り、どんどん暮らしが不便になります。そして、それが原因でさらに人が寄りつかなくなるという負のサイクルが生まれます。