それでも一筋縄ではいかないこともあり、外来ベースで手に余る場合は、入院治療で医療者の監視のもと、規則正しい生活を行うことをお勧めします。

薬物乱用頭痛のように紆余曲折が強いられ、長期戦になるやっかいな慢性の頭痛では、医者との二人三脚が欠かせません。健康で長生きするためには、これまでの連載記事でご紹介した通りの多様な頭痛の症状に寄り添いウォッチしてくれる「かかりつけ医」が心強い味方になります。まずは信頼できるかかりつけ医を見つけましょう。

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痛みに寄り添える「いい医者」と「ダメな医者」

良い医者は紹介状を出すことをためらいません。きちんとした治療をしている自信があるからです。自分の専門性の中で精いっぱい治療してきた結果が紹介状に現れるからです。また難しい症状であれば、頭痛を理解している医師のセカンドオピニオンを求め、石橋をたたきたいと思うのは良い医者の本能でもあります。

残念ながら、すべての医者がしっかり標準治療を順守しているとは言えません。長引く頭痛にもかかわらず、頭部MRI検査を1度も行わないとすると、正しい診断はできません。このような医者は、自信がないために紹介状をためらうタイプです。2割くらいいるでしょう。変な治療をして、症状を悪化させてしまう医者もいます。

「ご近所さんだから」「先生には意見を言いにくい」とは言わずに、医者から黙って立ち去る勇気も必要です。自分の頭痛を一番よく分かっているのは自分自身です。じっくり自分の頭痛の状態を自己観察する。医者に状態を伝え、コーチングを受けながら生活習慣を改める。医者任にせずに自分が主体となることが、頭痛における医者との向き合い方のポイントとなります。

それがかかりつけ医の質を高めることにもなります。大学病院とかかりつけ医のよりよい医療連携のためにも、かかりつけ医の質の向上は必須です。このような患者―かかりつけ医―大学病院の医療連携サイクルを回すことが大切です。

「いい医者」は少しずつ増えてきた

私は横浜市立大学附属市民総合医療センターペインクリニック内科に着任して4年経ちますが、かかりつけ医からの紹介状の質が上がってきたことを感じます。着任当初はごく簡単な通り一遍の単純で義務的な紹介状ばかりでした。

しかし最近は、「片頭痛が疑われますが、薬が効きません。画像診断でも異常所見なしです。心理社会的要因を私なりに調べてみましたが特に見当たりませんでした。貴院での集学的な精査と治療をお願いいたします」などとこれまでの治療歴と現在の問題がわかるようなレベルの紹介状が多くなってきました。

自分の仕事に自信のあるゴルゴ13のようなプロフェッショナルな臨床医を目指し、医療連携への地道な啓発を重ねた結果、連携先の医師たちの向学心の向上に寄与でき、まさに「石の上に3年」を実感でき、うれしく思います。