風力メーカーが一つもない日本に残された手

重要なのは、その過程で国内に洋上風力のサプライチェーンを構築し、建設から発電までのノウハウを蓄積することだ。そうすれば、第2弾、第3弾でのコストダウンにもつながり、一つの産業として根付かせることもできる。それが、さらなる導入の加速につながれば、正のスパイラルを生み出すことも不可能ではない。

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しかし、再エネの「本丸」である風力のメーカーが日本には一つもないのが悲しき現状だ。ここから欧州や中国へ追いつくことは不可能な中で、日本が洋上風力を産業として育成するためにはサプライチェーンを構築するしかない。

洋上風車は高さ300メートルにもなる巨大な構造物であり、主力パーツであるナセル(ギア、発電機などを収納する筐体)、ブレード(羽根)、タワー(塔体)などを始め、部品点数は2万点に上るといわれる。こうした部品の供給網を作り上げることで、欧米メーカーの製造拠点を日本に持ってくることが産業化のためには不可欠となる。

脱炭素でエネルギー業界が注目するアンモニア

「現在建設中の火力発電所も、最初は石炭を使いますが、順次アンモニアに変えていく」

日本に再エネの先端産業がない今、政府とエネルギー業界が期待をかける残された数少ない独自技術が「アンモニア」である。突然、アンモニアと言われても「尿」や「臭い」ぐらいのイメージしかないかもしれないが、今、少なくとも日本のエネルギー界においては一つの大きなトピックになっている。アンモニアの化学式はNH3であり、これを燃焼しても、CO2が出ないという点が注目を集めているのだ。

そして、これを火力発電に活用することで、2050年までに「ゼロエミッション火力」を実現するという壮大なプランをぶちあげたのがJERAだ。

JERAは福島事故後の電力再編で、東京電力と中部電力の火力・燃料部門を統合する形で設立された会社である。洋上風力事業にも注力しているものの、その根幹にあるのは、やはり火力発電だ。日本のCO2排出の4割を占める火力発電のうち約半分を担うJERAが、2050年までのカーボンニュートラルを宣言する中で導き出した一つの答えが「アンモニア」だった。